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新規助成団体 THE BIG ISSUE 掲載記事

「アートで介護」。
高齢者の施設をアート体験できる場に
-NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)

さまざまな分野のアーティストが施設に出向き、高齢者や職員とワークショップを楽しむ「アートデリバリー」。この活動に10年以上取り組み、今やその対象を子どもや被災者にも広げている「芸術資源開発機構(Art Resources Development Association)」に話を聞いた。

現代アートの画廊から高齢者施設へ

画像:理事長 並河 恵美子さん 理事長 並河 恵美子さん

現在、「芸術資源開発機構」(以下、ARDA)の理事長を務める並河恵美子さんは東京・銀座で35年間、現代アートの画廊を営んできた。しかし、「現代美術があまりにも専門的になりすぎて、本来、芸術がもつ根源的な力を失っている」ように思えてきたことから、98年に画廊を閉めた。

「もっと違うところにニーズがあるのではないか」と考えた並河さんは、「高齢者」に注目した。「長い人生の間にいろいろな経験を重ねて生きてきた高齢者。一人ひとりがもつ本質的なものをアーティストなら引き出せるのではないか」。それを見たいと思った。

そしてくしくも「国際高齢者年」の99年、並河さんを中心に結成した実行委員会はアーティストの協力を得て、自身の住む東京都杉並区の「特別養護老人ホーム上井草園」で、美術作品の展示とアーティストによるワークショップ「アートデリバリー」を実施した。生け花作家のアーティストと花を生け、「言葉の霊(声)を身体から出そう」というワークショップで声を出し、粘土で作品をつくる参加者たちは「自らの“生”を静かに確認しているようだった」と並河さんは言う。

02年には、並河さんの呼びかけで、学芸員や評論家、画廊経営者などの美術関係者が集まり、「NPO法人 芸術資源開発機構(ARDA)」を結成。04年と05年に「ファイザープログラム」の助成を受け、「アートデリバリー」の基礎は着実に築かれていった。

2年前からARDAのスタッフに加わり、事務局長を務めている工藤ひろ子さんは10年近く前からアートデリバリーに着目していたという。「母が認知症になっていく過程で、本人の人間性は変わらないのに、周りから子ども扱いされることに『それはないでしょう』という憤りがあった」。認知症の人たちを対象としたワークショップに参加した帰り道、工藤さんはそれまでの仕事を辞め、ARDAの一員になる決心をした。

飛び出すユーモラスな踊り、一つの歌になった音楽ワークショップ

写真:事務局長 工藤  ひろ子さん事務局長 工藤 ひろ子さん

「アートデリバリー」は、講師が何かを教える教室とは異なる。「アーティストと高齢者はまったく対等な立場」だと工藤さんは言う。

たとえば、あまり身体が動かない人を対象に行う「身体表現」のワークショップでは、舞踊家のアーティストが繰り出す挨拶代わりの珍妙な動きにつられ、参加者たちは椅子に座ったまま、思わず足を高く上げてユーモラスな踊りを始めたことがあった。また、1枚の薄い布を使って自由にイメージを膨らますゲームでは、施設の職員を包み込み、ベールをまとった花嫁のような姿に変身させた女性もいた。場がなごんでくると、得意のお囃子をうなり出す人まで現れ、終了後には、参加者の中から「バンザーイ、バンザーイ」という歓声が沸きおこった。

普段は無表情の人がいい笑顔を見せ、いつもすぐに「寝かせて」と言う人が踊りに集中し、認知症のかなり進んでいる人も「すごく楽しかった」と感想を漏らしたことに、施設の職員からも驚きの声があがったという。

とはいえ施設の中には、すでに理学療法士や作業療法士がかかわっているところもある。さらに対価を払って「アートデリバリー」を受け入れることに、二の足を踏む施設も少なくない。いわゆる「療法」との違いは何なのか。並河さんは次のように説明する。

「療法には目的があり、メソッドがあると思う。それに対して、アートデリバリーは現場でどう展開していくのか誰にもわからない。アーティストとかかわりながら自分を出していくうちにリラックスしたり、昔を思い出したり。効果は一人ひとり違いますが、結果としてセラピーになっていることもあります」

たとえば「即興で音楽をつくる」というワークショップでは、ピアニストが参加者と楽器に触れたり、歌ったりしているうちに、それぞれが思い出話を語り始めた。「きょうだいが多くてピアノなんかさせてもらえなかった」「戦争で物のない時代、親に頼まれて買い出しに行ったけど、2時間並んでも買えなかった」といった記憶の断片はピアニストの即興伴奏によって、そこでしかできないオリジナルの歌になった。

この一連の流れなどは「高齢者に対する心理療法としての回想法(※)とよく似ているのではないか」と並河さんは言う。

影響は高齢者だけにとどまらず、一緒に参加した施設の職員にまで及ぶ。職員は打ち合わせを経て、事前にワークショップを体験した上で本番に臨む。

「高齢者のいつもと違う一面に触れたことで、『もっと積極的に声をかけよう』と決意した人もいます。逆に、介護士さんの中にもノリがよく、踊りの上手な方がいて、お年寄りから『おもしろいやつだな』なんて声をかけられた人もいました。こういった発見は、その後のケアにもいい影響をもたらすのではないでしょうか」

また、高齢者とかかわることで、アーティスト自身も「表現とは何か」「自分とは何か」という根本的なことを問われ、表現の幅が広がっていくと並河さんは言う。

このようなアートデリバリーの効果を、ひと言で表すことは難しい。そこでARDAは昨年、「ファイザープログラム」から再度、助成を受け、『高齢者施設へアートデリバリー ハンドブック』を作成した。付属のDVDには、「造形」「身体表現」「音楽」といったジャンルの5回にわたるワークショップの様子が収められている。

さらに、「10年間の取り組みを振り返り、日々の介護にどうつなげるか」を検証した結果は『「高齢者施設へアートデリバリー」アートによるケアの可能性に関する調査 報告書』にまとめられた。

被災地でも45回のワークショップ、1287人が参加

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写真『高齢者施設へアートデリバリー』より。「高齢者在宅サービスセンター上井草ふれあいの家」でのワークショップ(撮影:落田伸哉)

ARDAでは、高齢者以外を対象にした「アートデリバリー」も行っている。

昨年5月初旬に現地を視察後、6月から「震災復興支援・こころをつなぐアートプロジェクト」を立ち上げ、 毎月東北へ出かけている。

仙台市の仮設住宅広場では美術家の考案により、どんな願いもかなう「なんでもスイッチ」を制作。小学1年生から72歳までの参加者に、願い事を書いた紙を組み立ててスイッチをつくってもらい、ボール紙に貼り付けていった。

「イライラoff/ニコニコonスイッチ」「晩ご飯ができているスイッチ」「結婚できるスイッチ」「流れ星が一つ流れてくるスイッチ」などのユーモアあふれるスイッチに、参加者同士の会話も盛り上がったという。

また、外で自由に遊べない南相馬市の幼稚園では、室内で音に合わせて身体を動かしたり、友達をマッサージしたり、布のチューブをくぐったりする「身体表現」のワークショップを開いた。被災地での45回に及ぶワークショップには合計1287人が参加した。

さらに今年度からは、神奈川県大和市との協働事業として「対話による美術鑑賞教育事業」にも取り組んでいる。これは、市内の小学生を対象に、知識に頼ることなく作品をよく見て考えることを促し、さまざまな意見を引き出しながら、作品の見方を深めていく「美術鑑賞教育」を市民ボランティアがサポートする事業で、ARDAはその仕組みづくりを請け負っている。

アートを身近なものにするために、あらゆる方法を試みてきたARDAだが、「将来的には人が集える拠点がほしい。たとえば、高齢者施設を入所者の家族や地域の方が訪れ、気軽にアートを体験できる場所にしたい」と話す。

ある施設の所長は「人が人生のファイナルステージに立つ時に、自分たちが育む文化的な要素がない」という理由から、「アートデリバリー」を受け入れたという。豊かな最期を迎えたい。それは誰しもがいつかは抱く切実な願いだ。自分自身の問題として受け止めていきたい。

※ 高齢者に過去の思い出を想起するように働きかけることで、情動の安定などの心理的な効果を導く対人援助手段

NPO法人 芸術資源開発機構(Art Resources Development Association)

「芸術という資源を開発して、その新しい可能性を社会に活かすこと」を目的とし、東京都杉並区在住の美術関係者が中心となって、02年9月に設立。高齢者施設、保育園、幼稚園、児童館、被災地への「アートデリバリー」、シンポジウムなどを企画・運営している。

※会員として一緒に活動したい方、ARDAの活動を支援してくださる方を募集しています。また、アートデリバリーに関心のある高齢者施設の方は、お気軽にお問い合わせください。

〒168-0082 東京都杉並区久我山5-23-2
TEL & FAX : 03-3334-7876
メール : info@arda.jp
ホームページ : http://www.arda.jp/

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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