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2011年度新規助成団体 BIG ISSUE掲載記事

社会へ一歩踏み出す。
職業訓練や就労支援を通して、薬物・アルコール・ギャンブル依存の回復へ
-NPO法人 潮騒ジョブトレーニングセンター

茨城県鹿嶋市の「NPO法人 潮騒ジョブトレーニングセンター」は、全国70ヵ所近くある薬物・アルコール依存症者の回復施設「ダルク」関連施設の中でも珍しく、職業訓練・就労支援に力を入れている。社会へ一歩を踏み出すための取り組みや課題を聞いた。

7回、通算20年の刑務所生活 ダルク回復プログラム体験からNPOつくる

画像:施設長 栗原豊さん 施設長 栗原豊さん

茨城県鹿嶋市に広がる畑ではナス、トマト、トウモロコシ、シシトウをはじめ、炒め物やサラダに最適で、この辺りが栽培の北限地という青パパイヤなどがすくすくと育ち、数人が収穫作業に追われていた。

ここは、アルコール・薬物・ギャンブル依存症からの回復を目指すリハビリテーション施設をもつ「潮騒ジョブトレーニングセンター」(以下、「潮騒JTC」)の第2農場。鹿嶋市内に合計6ヵ所、合わせて4500坪ある田畑のうちの一つだ。

この「潮騒JTC」を立ち上げ、現在施設長を務める栗原豊さんもまた、アルコールと薬物の問題を抱える当事者の一人だった。

栗原さんの父親は戦死し、3歳の時に養子に出された。その家庭で虐待を受けるなど、過酷な環境で育ち、飲酒を始めたのが13歳の時だった。それからは、酒を飲めば暴れる「酒乱」で問題を起こしてきた。「不良少年」となり、20代で暴力団の世界に足を踏み入れ、20代半ばで覚醒剤と出合った。博打の客に出した覚醒剤の余りを打たれたのが始まりだった。

「覚醒剤の利権にからんだ抗争事件で逮捕されて以来、刑務所には7回入り、通算20年を過ごしました。03年に群馬県の前橋刑務所を満期で出所した頃には、薬物中毒で組織の仲間にも見限られ、薬物依存症の回復者である姪っ子が迎えにきてくれただけでした」

ところがその後、一時的に宿泊した前橋のホテルで冷蔵庫の酒に手を出したのを機に、問題飲酒が再発し、気がつくと埼玉県大宮の留置場にいた。

「逆算すると3日3晩飲み続けていたようで、包丁を持って歩いているところを銃刀法違反で逮捕されましたが、またしても姪っ子が身元引き受けに来てくれて、薬物依存症回復施設ダルクへつながることを条件に処分保留となりました」

まもなく茨城県神栖市の鹿島ダルクに入所した栗原さんは、石膏ボード工場のラインを清掃するアルバイトをしながら、地道に回復プログラムに取り組んだ。そこでの経験から、「社会に居場所をつくるためにも、自分に何ができるか試すためにも労働は欠かせない」と確信。そして07年、後ろ盾や下支えの人脈がない困難な状況のもとで職業訓練や就労支援をメインとしたダルクの関連施設として、仲間数人と「潮騒JTC」を正式に立ち上げた。

回復は地元を離れた場所で 既にもつ建築や土木の資格を生かす

スタッフ 加勢 釣さん(写真左)/支援者 市毛勝三さん(写真右)スタッフ 加勢 釣さん(写真左)/支援者 市毛勝三さん(写真右)

ここではアルコール・薬物・ギャンブル依存症などからの回復を目指し、民宿やビジネスホテルだった建物を改装した「ナイト」と呼ばれる宿泊施設で、約100人が入寮生活を送っている。中には、「機能不全の家庭で育ったアダルトチルドレンで、感情のコントロールが難しいため、ここで回復を目指しながらスタッフとして働いている」という人もいる。そんな加勢釣さんに、1日のスケジュールを聞いた。

「入寮者は朝9時までにナイトからデイケアの建物へと移動し、掃除と朝の会合の後、ダルク・ミーティングに参加します。これはアルコールの自助グループなどでも用いられている12ステップを基本とした、言いっぱなし聞きっぱなしが原則のミーティングです。昼食後はウォーキングやソフトボール、夏はサーフィンや釣りなども取り入れたスポーツプログラムで日光に当たって体力を充実させ、人として当たり前の感情を取り戻します。そして夜は各自で施設を出てAA、NA、GAといったアルコールや薬物、ギャンブルの自助グループ・ミーティングに参加します」

「潮騒JTC」では、「最終的には家族関係の修復まで達成できるように」との願いを込めて、家族会の活動も支援している。

茨城県内の地方新聞記者としてダルクを20年間取材し、潮騒JTCにも支援者の一人としてかかわっている市毛勝三さんによれば、日本では薬物・アルコール依存症者に対して犯罪者、落伍者といったレッテルを貼りがちで、自業自得や自己責任論が根強く、家族が愛情で立ち直らせるべきだと考える風潮があるという。

「家族が面倒をみるとなれば、本人は地元へ戻ることになり、そこには昔の仲間が待っている。家族が当事者を突き放し、地元とは遠く離れた場所で回復するのが理想です。そのためには家族自身が当事者の世話を焼く共依存の関係から回復し、成長する必要があります」

また「潮騒JTC」の入寮者は、ほかのダルクよりもアルコール依存症者の比率が高いのも特徴だ。

「入寮者に職業意識調査と個別面談を実施したところ、アルコールの問題を抱える以前は何らかの仕事に就き、社会的な経験や常識のある人も多いことがわかりました。また大型特殊免許など、建築や土木関係の資格をもつ人も多いことから、世間で3Kといわれてきた解体作業のような仕事で職業訓練を行いながら、受け入れ先となる地域社会への啓発に努めてはどうかと考えました」

夢はファミレスへの農産物の供給“生活保護受給者から納税者へ”がモットー

写真:夏野菜が植えられている第2農場夏野菜が植えられている第2農場

そこで12年、「潮騒JTC」はファイザープログラムの助成を受け、精神科医やハローワーク、鹿嶋市、矯正施設の職員や地元の事業主から助言を受けながら、職業訓練でどんなことができるかを模索していくことにした。

栗原さんによれば、「家屋の解体作業や雑木林の伐採、庭木の手入れや草刈り、パソコン教室などを行う中で、地元の支援者から農地提供の申し出があり、メニューの一つとして農作業を加えた」という。

それまでずっと家にひきこもり飲酒を続けていたせいで、いきなり太陽を浴びて倒れてしまった人もいたため、短い時間から始めて少しずつ身体を慣らしていくよう工夫もした。農作業は「入寮者の顔つきを変え、達成感や生きがいを与えてくれる」と話す栗原さん。思った以上の効果が表れているようだ。

助成2年目の今年は1ヵ所だった「しおさい水田」も3ヵ所に増え、コメどころの新潟県で何十年と米づくりに携わっていた入寮者が本領を発揮して、40俵の米が収穫できる見通しだという。これまでファミリーレストランの駐車場でジャガイモやピーマンを販売させてもらったことはあるが、今後は地元の農業従事者の協力を得て、年間を通した計画的な野菜づくりを行い、ファミリーレストランへ定期的に出荷できるくらいになりたいと栗原さんは話してくれた。

「依存症者はいつも怖がられ、誤解と偏見にさらされているけど、薬物やアルコールを使わなければ普通の人。入寮者は日々、身を持ち崩すまでに至った過去の生き方に反省を加え、新しい生き方を目指して自分と真剣に向き合って生きている。ごみだって拾うし、困っている人がいれば助ける。先回りして心配ばかりされると何もできなくなる」と加勢さんは言う。

市毛さんも、「相手を思いやり、いい意味でのいい加減さを認め合う入寮者たちの生き方」を「競争で、ぎすぎすした社会に対する一つのアンチテーゼ」とみている。

「20年くらい前までは生活保護を受けられず、路上生活を送ったり、死んでしまったりする依存症者が少なくありませんでした。生活保護を受けられるようになり、居場所を確保しながら回復プログラムに取り組めるようになった今は、一つの施設が自分に合わなければ別の施設へ移ることもできる。それはいいことですが、半面で施設の中に滞留する傾向が生まれています。この現状を打破するためにも志を高くして“生活保護受給者から納税者へ”をスローガンとして掲げ、依存症者が社会に新しい一歩を踏み出せるシステムづくりに取り組んでいきます」

写真:「ナイト」と呼ばれる宿泊施設「ナイト」と呼ばれる宿泊施設

NPO法人 潮騒ジョブトレーニングセンター

06年3月、鹿嶋市内のアパートで前身となる「鹿嶋潮騒ダルク」設立。07年9月、クリニックだった建物を活用して就労支援を柱に据えたダルク関連施設として「潮騒ジョブトレーニングセンター」へと名称変更し、現在に至る。薬物、アルコール、ギャンブルなどの依存症から回復するための民間リハビリテーション施設であり、回復後は社会復帰して就労できるよう独自の就労支援プログラム開発に努めている。

〒314-0006 茨城県鹿嶋市宮津台210-10
TEL : 0299-77-9099
FAX : 0299-77-9091
ホームページ : http://shiosaidarc.com/

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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