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2011年度プロジェクトの概要と選考委員会推薦理由

新規助成対象プロジェクトの概要と選考委員会推薦理由

新規助成

(1)つなげよう!ひろげよう!こども達の笑顔のリレープロジェクト(市民活動)

団体名 ぱん・ぱん・ぱんぷきん
代表者名 松浪 智子
主な活動地域 岩手県

本団体は、北海道士幌町を拠点とし、子育て支援カー「ぱんぷきん号」による巡回児童館活動を中心に子育て支援活動に取り組む団体である。東日本大震災に際し、「ぱんぷきん号」に支援機材と支援ソフトを搭載し、フェリーで運び、岩手県沿岸部での2度にわたる支援活動を行った。

本プロジェクトは、とりわけ、子どもたちの育ちの場所として重要であると位置づけている学童保育において、10年にわたり蓄積してきた300タイトル以上の子育て支援メニューの提供を通して、復旧の遅れをサポートするものである。

子どもたちの支援にあたるのは、いわゆる専門家ではなく、“シルバーレンジャー”という会のメンバーである。彼らは、団塊世代の退職者たちであり、士幌町で2002年に始まった子育て支援活動と環境事業を融合させた「遊~遊~村」づくりを通して、知識と技能を活かし、支援者として参加してきた。本プログラムを通し、新たなミッションとして被災地域の子どもたちに、夢や希望を与える存在となるよう、彼らの活躍を期待する。

(2)震災に負けないで!~震災による自殺を防ごうプロジェクト(市民活動)

団体名 岩手自殺防止センター
代表者名 藤原 敏博
主な活動地域 岩手県

1998年から12年連続自殺者3万人超※1という日本の自殺者の実態は、依然として変わっていない。さらに、東日本大震災により、様々な悩みを抱える人たちの激増は想像に難くなく、過去の震災で十分なメンタルケアが行われず、自殺や孤独死に繋がった実例からも、心のケアに関する様々な努力は喫緊の課題である。

本団体では、自殺防止組織である国際ビフレンダーズの国内5番目の拠点として、2年前に設立され、メンタルヘルスの専門家ではなく、訓練を受けた傾聴ボランティアが電話相談を通して自殺防止活動に取り組んでいる。

本プロジェクトは、今回の大震災を鑑み、段階的に電話相談時間の拡大を図るとともに、被災地への訪問相談活動や自殺防止啓発活動を行うものである。

設立間もない時期に、今回の大災害が発生し、相談員自身も被災者でありながら被災県として、より一層の自殺防止活動が期待されているという困難な状況であるが、できるだけ多くのボランティアの参画により、相互扶助による心の復興を期待する。※1参考:警察庁HP)

(3)プロジェクト名:高次脳機能障害者と家族の支援ネットワークづくり事業(市民活動・市民研究)

団体名 特定非営利活動法人ほっぷの森
代表者名 深野 せつ子
主な活動地域 宮城県

当団体は2007年に発足し、仙台市において就労移行および継続支援事業として、障害者就労支援センターやレストランを運営している団体である。他の助成金により、これまでの3年間で高次脳機能障害者本人と家族の実態調査、宮城県内7圏域における講習会の開催とハンドブックの作成を行い、調査研究ならびに実践活動を展開してきた実績がある。

最終年度である本年は、県内の保健福祉事務所や拠点病院、福祉施設等の参画のもと、本人と家族を中心とした支援ネットワークを立ち上げる予定であった。しかし3月に発生した東日本大震災を受け、地域のニーズに即応するために出前研修会の実施に変更となったが、これまで蓄積してきた本人と家族の支援ネットワークの必要性を再認識することとなった。

今回の助成は、これまで培ってきた各機関との連携を活かし、ネットワークづくり事業を始動させるための支援となるが、地域による課題の相違や支援体制の格差を踏まえた上で、県全域を視野に入れたネットワークを構築していくためのニーズ把握と、そこから得た課題を解決するためのさらなる活動展開に期待する。

(4)薬物・アルコール依存症者の自立支援および就労プログラム開発モデル事業(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人潮騒ジョブトレーニングセンター
代表者氏名 栗原 豊
主な活動地域 茨城県

薬物やアルコール依存症者の回復プロセスにおいて、職業を得て自立することは非常に重要である。しかし、社会における依存症への理解は乏しく、依存症の既往歴を持つ者の雇用は厳しい。そのため、回復途上の依存症者は、支援施設内に留まらざるを得ないのが現状である。

本団体は、茨城県鹿島市において複合型依存症施設として、依存症者の支援を5年にわたり行い、当初から一定の回復に達した依存症者の職業支援を手探りで行ってきた。本プロジェクトでは、より組織的な職業訓練、地域における雇用場所の開拓、地域の雇用環境のネットワーク作りなどを発展させ、より多くの依存症者の社会復帰を目指す。

従来の依存症者への支援が、施設内での依存症の回復に焦点が当たっていたのに対して、本プロジェクトは、本格的な社会復帰を志向しており、依存症支援の新しい局面を開く意欲的な試みであると言えよう。

(5)プロジェクト名:外国人相談に従事する相談員のためのメンタル・ヘルスケア支援体制構築事業(市民活動・市民研究)

団体名 特定非営利活動法人ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY (A.P.F.S.)
代表者氏名 加藤 丈太郎
主な活動地域 東京都

日本の外国人登録者数※1は、2011年9月末現在、全国で208万人以上、そのうち東京都には40万人以上おり、今後も増加が見込まれている。彼らが、日常直面する様々な問題に対しては、多文化共生の観点に基づいた、NGOなどの民間支援に負うところが大きい。

当団体は、いわゆる「ニューカマー(新来外国人)」の急増を契機に、20年以上にわたり、在日外国人の支援活動を続けてきた。現在、都内には、在住外国人支援団体は275団体あり、うち152団体が、電話相談事業を含む相談活動※2を行っているが、当団体だけでも、相談件数は年間1,000件を超え、内容の複雑化、多様化、深刻化から、相談員の心理的な負担は計り知れないものとなっているという。

本プロジェクトは、長年にわたり相談員個人が抱えていた課題を、「当事者をケアする人たちへのケア」という視点に立ち、組織の問題として解決に取り組むものである。少人数、無報酬という厳しい環境の中、この貴重な人材が失われることのないよう、早急な対策が講じられることを期待する。※1参考:法務省HP、※2参考:国際交流委員会HP)

(6)セクシュアル・マイノリティのための無料電話相談・直接支援プロジェクト(市民活動)

団体名 共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク
代表者名 原 美奈子
主な活動地域 東京都

セクシュアル・マイノリティは、同性愛、性同一性障害、性分化疾患など、性指向・性自認・身体の性別のあり方が非典型とされる人々のことをいう。その当事者は、同性愛指向や性別違和感、からだの性別が曖昧であること等にまつわる悩みやストレス、心身の不調などにさらされていることが多い。しかし、セクシュアル・マイノリティの社会的認知度は低く、公的機関や医療機関等の理解や対応は追いついていないため、当事者は安心してこれらのサービスを利用できる状況とは言い難い。

2008年に発足した当ネットワークは、2010年8月に民間の助成を受けてセクシュアル・マイノリティのための無料電話相談を開設した。本プロジェクトは、その発展的な取り組みにあたり、無料電話相談および面談・同行支援を行うとともに、体制拡充を視野にいれた電話相談員育成用のテキスト作成を行う。

当事者から対価を得ることは難しい面があると思われるが、将来的には同行支援にかかる旅費を相談者に負担してもらうなど、仕組みを整備することや、会費・寄付金や助成金などの支援系財源の確保を粘り強く試みることにより、事業を継続するための基盤を整えるよう期待したい。

(7)性犯罪被害者の自立のための交流会づくり(市民活動)

団体名 みかつき委員会
代表者名 小林 美佳
主な活動地域 東京都

性犯罪はいかなる状況においても許されるものではなく、まして被害者は人生そのものに大きな影響を受ける。警察はもとより家族を含めて明らかにすることが憚られ、一人悩み続け、自らの存在そのものも肯定することができなくなる被害者もいる。それだけに一人ひとりをゆっくりと傾聴しながら受止めていくことには多くの時間が必要であり、被害者自身が信頼し、安心できる人・場の確保が喫緊の課題といえ、その痛みを共感している者同士の取り組みが不可欠である。

本プロジェクトは、そのワンステップとして、このプログラムを必要としている人にどれだけ認知してもらうことができるか、また、面接と出会いのなかで、きちんと寄り添える体制を整えられるかなど、いくつかの課題もある。大切なスタートとして期待するところである。

(8)「美術と手話」~ろう者とつくる美術鑑賞プログラムと美術用語の手話化事業(市民活動・市民研究)

団体名 特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン
代表者名 吉永 宏
主な活動地域 東京都

2006年12月に成立した障害者権利条約において、「手話は言語である」と明記された。この点からも、ろう者のための「美術鑑賞プログラム開発事業」と「美術用語の手話化事業」の2本柱で活動を展開する本プロジェクトは時宜にかなっている。ヘルスケアの定義を再考した場合、治療や回復のみにとらわれず、「人間の尊厳」をも視野に入れたろう者と美術鑑賞という視点の豊かさや、ろう者とともに考えていこうとする姿勢は評価に値する。手話を用いることで他者と語り合い、つながることは、ろう者のQOLの向上にも寄与する。

当団体は1994年に発足し、障害のある人をはじめ、生きにくさを抱える人たちと共に、芸術活動を通した自己表現の場や仕組み、作品の販促環境、美術・舞台作品へアクセスする環境等の整備に積極的に取り組んできた。視覚障害者の美術鑑賞に関する活動実績もあり、それらの活動を通じて他団体との幅広い連携が図られており、本プロジェクトの実現可能性も高いと考える。活動を通して得られた研究成果を、広く社会に還元していくことで、ろう者にとどまらず多様なニーズを抱えた人たちにも開かれたものになることを期待したい。

(9)発達に障がいのある子ども・若者のための心とからだの講座(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人子ども&まちネット
代表者名 伊藤 一美
主な活動地域 愛知県

心身の発達に障がいのある子どもや若者は、自身の心とからだのしくみや変化について、分かりやすく学べる教育プログラムが少なく、また知識や経験不足、判断力やコミュニケーション力が弱いため、さまざまな犯罪の被害者や加害者になりやすい傾向がある。

本プロジェクトは、心身の発達に障がいのある子どもたちを、犯罪の被害者にも加害者にもしないための予防教育プログラムの開発と普及に主眼を置いている。具体的には、支援者、保護者、子どもたちを対象とした研修会やワークショップ、および教材の企画・開発を行うとともに、リーフレットを作成・配布し、社会への普及と啓発に取り組む。

これまで独自に活動していた関係者が、本プロジェクトの運営委員会をもって共通のテーブルに着く。各自の知恵と工夫を本プロジェクトに結実できるよう、本団体の「つなぎ手」としての働きに期待したい。また、全国の発達に障がいのある子ども、そして子どもたちを取り巻く大人にも、気づきと行動を促せるよう、モデルプログラムになるような成果を期待したい。

(10)若年で発症した認知症患者のための「つどい」の場作り普及充実活動(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人認知症友の会
代表者名 佐賀 智恵
主な活動地域 京都府

高齢者の認知症については医学的にも解明が進みつつあり、介護施設の充実や地域を上げてのケアの取り組みも始まっているが、若年期に発症する認知症は従来の高齢者認知症の介護・生活対応等とは異なる。仕事や友達関係の多くが失われたことによる当事者のコミュニケーションの崩壊や生きがいの喪失などからくる心の孤立化、当事者家族の戸惑いと苦悩など、医療及び介護等を含め、ケアの方策は、未知の取り組みともいえる。

本プロジェクトは、共感しあえる当事者の仲間づくりの場としても重要な一歩である。本人主体の初期軽度期を過ごすことができる「つどい」の場を、認知症の人だけが集まる特別な場所ではなく、一般市民も気兼ねなく集える場としたいという信念は、孤立した当事者の生活の張りと自信にも繋がるだけに、本プロジェクトが地域に根差した拠点となるよう、多くの理解者を得て実現されることを期待したい。

(11)釜ヶ崎における困難者の居場所づくりといきがい事業(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人こえとことばとこころの部屋
代表者名 上田 假奈代
主な活動地域 大阪府

日雇い労働者のまちとして知られる「釜ヶ崎」は、現在「単身高齢者のまち」となり、高齢者のほとんどが生活保護受給者と野宿者である。野宿者は、生活保護を受けることで路上から畳の上にあがったものの、その多くは単身高齢者で人とのつながりが希薄な傾向にあるため、家があることでかえって孤立化が進む場合がある。釜ヶ崎では、いわゆる「無縁社会」がもたらす課題に直面しているといえる。

本プロジェクトは、釜ヶ崎で暮らす単身高齢者等の孤立化を防ぐため、健康相談や生活相談、表現活動などのワークショップを定期的に行い、人とつながる動線をつくることで、居場所づくりやいきがいづくりにつなげるものである。2003年の設立当初から釜ヶ崎に関わりをもつ本団体が中心となって、他の支援団体や活動団体とも連携しながらプロジェクトを進める。

人の尊厳を守って人生の終末期を迎えることの一助となるであろう本プロジェクトに期待したい。

(12)盲ろう者のストレス軽減のためのリサーチと方策の検討(市民研究)

団体名 特定非営利活動法人視聴覚二重障害者福祉センターすまいる
代表者名 門川 紳一郎
主な活動地域 全国(大阪府)

全国に盲ろう者は約2万人いると言われている※1。視覚と聴覚に障害があるため、情報アクセス・コミュニケーション・移動に困難を抱え、日常生活や社会生活を送るうえで多くの制約を受けることとなり、そのことによる心身のストレスは非常に深刻である。ヘルスケアの観点からの研究と対策が急がれる分野だ。

本市民研究は、当事者が主体となって、聞き取り調査を行うとともにピアカウンセリングも行うことが特徴で、盲ろう者が日々抱えるストレスや悩みに当事者の目線で向き合い、調査分析を試みる点を高く評価した。東日本大震災で被災した盲ろう者を含めて、30件の聞き取り調査を行い、その分析をもとに、盲ろう者の情報アクセスや情報交換を円滑にするネットワークの整備、講習会や個別面談による人的支援、本団体が独自に開発したバリアフリーソフトウェアをツールとした個別学習会等に実証的に取り組む。盲ろう者のストレス軽減のための解決策を総合的に見出せるよう、市民研究の成果を期待したい。※1参考:(福)全国盲ろう者協会調べ)

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継続助成対象プロジェクトの概要と選考委員会推薦理由

継続助成2年目

(1)プロジェクト名:「農業の力」でニート・ひきこもりの若者を元気にするプロジェクトver2.0(市民活動)

団体名 山形県新規就農者ネットワーク
代表者名 牧野 聡
主な活動地域 山形県

本団体は、山形県で新しく農業を始めた若者の組織であり、新規就農者の育成・定着を図るとともに、農業生産だけでなく、農業の特性を活かして、環境や地域社会に貢献する新しい農業のかたちを模索することを目的としている。

農産物の直売で訪れた横浜でのニート・ひきこもりの若者たちとの出会いをきっかけに、就農というかたちでの社会復帰を喚起するための農業体験プログラムを試みてきた。

助成1年目は、シバザクラの生産から植栽までの農業研修を通じ、農業技術を学ぶ一方、地元農家・住民との植栽活動や除草作業での協働を通し、地域コミュニティに溶け込む第一歩を踏み出すことができた。助成2年目では、ジャガイモやトウモロコシなどの食べられる農産物の生産技術の習得に新たに取り組むとともに、農産物の直販や飲食販売による接客・調理といった能力向上機会を増強する。日本の農業が転換を迫られている今日、農業を通して、ニート・ひきこもりの若者たちの社会復帰を応援する就農支援の試みは、社会的に意義深いものである。

(2)プロジェクト名:「見た目問題」ネットワークの構築・拡充および情報発信(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人マイフェイス・マイスタイル
代表者名 外川 浩子
主な活動地域 東京都

アザ、やけど、キズ、脱毛など「見た目」に症状のある人は、日本に80~100万人いると推計されるが、機能的な障害ではなく、治療の緊急性・必要性が低いことなどから、公的な支援は得られ難い。孤立しがちな当事者にとって、悩みを分かちあえる仲間との出会いや当事者団体の存在は大きな意味をもつ。しかし、全国各地にある当事者団体、関連企業や医療機関などの情報は一元化されておらず、その存在すら知らない人は、ひとりで問題を抱え込んでいる可能性が高い。

そこで助成1年目は、各地の当事者団体と進め方などをじっくりと話し合い、「『見た目問題』ネットワーク共催イベント」というオープンミーティングを、大阪、富山、福岡、東京で開催することを企画し、これを機に「見た目問題」に取り組む関係者間の連携促進をねらった。助成2年目は、「見た目問題」のウェブ版サポートセンターを開設し、当事者団体や支援企業の情報の可視化に着手するとともに、公開シンポジウムやイベントを開催して、「見た目問題」の全国的なネットワーク構築と総合的な支援体制づくりの基盤とする。そのプロセスで支援の輪をつなぎ、「見た目問題」のリアル版総合サポートセンターの設立に結実させていく構想だ。提案事業は多岐にわたるため、進捗管理の徹底と事業推進体制の拡充を確実に行い、「見た目問題」の社会化および社会的認知の向上を期待したい。

(3)東京プロジェクト-医療・福祉の支援が必要なホームレス状態の人々の精神と生活向上-(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人メドゥサン・デュ・モンド ジャポン(世界の医療団)
代表者名 エフテル・プリュン
主な活動地域 東京都

本プロジェクトの助成1年目は、ホームレス状態にある人達の精神障害や知的障害についての実態調査と、そうした課題をもつ人々への支援活動を行うものであった。調査からは、何らかの精神疾患をもつ人が6割という実態が明らかにされた。また支援活動は、複数の支援団体と協働して相談、ケア、リハビリテーションなどのメニューを組み合わせて行われてきた。

助成2年目は、支援活動を継続し、地域の関係機関との連携を図るものである。本プロジェクトは、新しいサービスの創出というより、ホームレス状態にあって精神障害や知的障害をもつ人々の医療や福祉サービスへのアクセス保障に重点が置かれている。その背景には、居所をもたないがゆえに、サービス提供機関から支援対象として捉えられないという現状がある。

地道に支援活動を積み重ね、サービス提供機関とのネットワークをつくることは、ソーシャルインクルージョンのモデル活動と言えよう。その意味で、社会的排除の問題を市民社会に問い直すアドボカシー活動として意義深いと考える。

(4)脱暴力プログラムの啓発事業(市民活動)

団体名 メンズカウンセリング協会
代表者名 川島 康史
主な活動地域 京都府

現行のDV防止法が施行して、ほぼ10年が経過しようとしているが、その間何度か改正が試みられているものの、加害者への対策が盛り込まれておらず、暴力を振るった加害男性は、妻子から遠ざけられ、社会から孤立し、新たな暴力へ移行するという悪循環に陥っている。

本団体は、DV・虐待などの家族間暴力の背景にある、ジェンダーのとらわれや社会的な抑圧構造を理解し、当事者の脱暴力を具体的に実践する「メンズカウンセリング理論」により構成された『男の非暴力グループワーク』における10年来の実績に基づき、“加害者も変われる”ことを実証するために、助成1年目では、脱暴力プログラムの有効性を確認した。

助成2年目では、脱暴力プログラムのさらなる普及・啓発を目指したプロジェクトを予定しているが、脱暴力プログラムのテキスト作成は、脱暴力プログラムファシリテーター養成講座におけるフェイス to フェイスの実践を積み重ねた上で、内容の精査を図りながら慎重に取り組まれることを望む。

(5)刑務所を出所した薬物依存症者の包括的な回復支援プロジェクト(市民活動)

団体名 フリーダム
代表者名 倉田 めば
主な活動地域 大阪府

薬物依存症者が刑に服し出所してきても、また薬物に手を出し犯罪を重ねてしまうことが多い。本団体は、拘置所に収監中の薬物依存症者への支援として刑務所内で活用できるワークブックの作成をおこない、薬物から離脱するための教育を実践してきた。こうした活動を通じて弁護士をはじめとした司法関係者はもとより更生保護、医療、福祉などからの理解とネットワークの広がりを見せてきたことは大きな成果といえる。

2年目の助成では社会的支援策がない中でこうした実践が重要な活動であると評価するとともに、出所後の治療やリハビリ、生活について実体験者が経験をもとに語りかけることにより、より身近なものとしてDVDの効果性があると判断した。しかし、このDVDを刑務所の中で有効に利用してもらうことが課題であり、それだけに多くの刑務所の理解を促進するための緊密な連携体制の構築も期待したい。

(6)大人になった自死遺児の聴き取り調査~親の思いを聴き取る~(市民研究)

団体名 カウンセリングスペース「リヴ」
代表者名 吉田 まどか
主な活動地域 全国(大阪府)

2000年に大阪で始めた当会の「親の自殺を語る会」。そこで語られる思いや体験を聴くなか、家族を自死で亡くし、遺された子どもたちを支える家族調整プログラムの必要性を痛感してきた。

そのプログラム開発にあたり、助成1年目は、大人になった自死遺児18人の声を丁寧に聴き取り、承諾のあった14人の物語を冊子にまとめた。この調査を通じて気付いたことは、遺された子どもの声だけでなく、遺されたパートナー(子どもの親)の声も集めなければ、家族へのアプローチは難しいということである。そこで、助成2年目は、パートナーを自死で亡くし、子どもを育てた人(親)への聴き取りを行い、承諾のあった人の物語を冊子にまとめ、家族調整プログラムの考案につなげる。

本市民研究の鍵は、聴き取った個々の物語を、いかに支援プログラムの考案ならびに検証に活かすかにあるだろう。その実践研究の成果に期待したい。

(7)不登校・引きこもりなどの子どもを持つ保護者へのストレスケアプロジェクト(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人フリースクール風の里
代表者名 工藤 幸安
主な活動地域 福岡県

不登校・引きこもりなどの子どもの支援においては、その保護者に対する支援もまた不可欠となるが、保護者はそれぞれの立場で悩みや不安、ストレスを抱え、精神的に孤立しているケースが多く見受けられる。

本団体は助成1年目において、子どもの支援と同時に、保護者のそれぞれの立場を考慮したストレスケアを実施するストレスケアプロジェクトを実施した。具体的には、個別的な支援を行う「保護者一人会」、グループでの支援を行う「ホッと会」および「ホッと手作り会」など、いずれも活発な活動が行われてきた。特に「保護者一人会」は、当初の予想を上回る125名の利用者があるなど、そのニーズの高さが窺われる。

助成2年目は、「ホッと会」と「ホッと手作り会」を併合し、より効率的な運営を図るとともに、「保護者一人会」については、休日を設けずに夜間も相談できる体制を整備するなど、さらなる充実が計画されている。その高いニーズから活動の拡充が求められるところであるが、そのためには、スタッフの活動環境を整えていくことが必要になると考えられる。

(8)性的虐待体験者が性産業で働く理由とその実態調査~支援編(市民研究)

団体名 特定非営利活動法人女性ヘルプネットワーク
代表者名 楠本 千惠子
主な活動地域 全国(福岡県)

性産業従事者に性的虐待体験者が少なくないとの指摘が多くなされているが、その実態についてはいまだ十分に明らかにされていない。

本団体は助成1年目において、「性的虐待体験者が性産業で働く理由とその実態」について、アンケート形式とヒアリングによる調査を実施した。その結果、性的な事柄によって実際に心身に影響があっても、それを被害者側が性被害の影響として捉えていない実態が明らかとなった。また、公的機関を含めた相談機関について、地域的な偏りがあることや十分な対応がなされていないことも見えてきた。

助成2年目においては、アンケート調査において記述された支援機関や先進的な取り組みを行っている機関に対するヒアリング調査が予定されており、これらをもとに報告書を作成するとしている。本団体による一連の調査結果は、性的虐待体験者への適切な支援体制の構築や被害者に届く広報のあり方などを検討する上で、極めて貴重な資料となることが期待される。

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継続助成3年目

(9)高齢聴覚障害者、盲ろう者の話し相手、コミュニケーション体制の充実事業(市民活動)

団体名 特定非営利活動法人ひびきの会
代表者名 伊藤 和子
主な活動地域 岩手県

本団体は、従来の活動対象者である高齢の聴覚障害者に加え、視覚障害と聴覚障害との重複障害をもつ盲ろう者を対象に、交流会や訪問活動及びピアサポートを含めた支援者への自立のための学習会を行なうなど、社会参加の機会が少ない当事者たちの生きがいづくりの場を提供してきた。

助成1年目、2年目では、従来の高齢者施策では埋もれがちな盲ろう者および高齢ろうあ者の実態調査とともに、手話通訳者の育成や自立のためのホームヘルパー資格取得を進める一方、公的事業への転換の模索など、意欲的な取り組みを実施した。

助成最終年では、これまでのニーズ調査の結果を踏まえ、グループホームまたはデイサービスセンターなどの拠点作りが計画されているが、行政との連携体制の変更や施設の改修工事の遅れなど、東日本大震災の影響を免れない状況がある。拠点の確保には、資金確保が最大の課題であるため、未曾有の震災による予測不可能な環境変化を踏まえ、事業化に向けては、慎重に取り組まれることを期待する。

(10)全国のエイズ治療拠点病院に関する情報整備および情報提供(市民活動・市民研究)

団体名 特定非営利活動法人日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス
代表者名 長谷川 博史
主な活動地域 全国(東京都)

HIV/AIDSは、多剤療法登場後、治療しながら付き合い続ける慢性疾患となった。それに伴い医療ニーズも大きく変化し、身近な地域でHIV専門診療と一般診療が提供されることが必要とされている。

本プロジェクトでは、こうしたHIV陽性者を巡る治療状況の変化を踏まえ、助成1年目は、専門診療を担っている全国のエイズ治療拠点病院の診療実態を調査し、2年目はHIV陽性者の診療実績のある一般医療機関の情報を収集した。あわせて、これらの診療情報を当事者へ提供する仕組みを構築してきた。これら2年間の調査からは、HIV陽性者が多い首都圏や阪神圏と、他地域との医療提供体制の格差が浮き彫りにされた。

助成最終年度である本年度の活動は、HIV陽性者の医療ニーズを当事者調査によって明らかにしようとするものである。本調査は、HIV陽性者のニーズが潜在化しがちな地方においては、とりわけ意義深いと考える。調査結果から、HIV陽性者が日常生活の中で医療にアクセスできるための次の活動へと発展することを期待したい。

(11)野宿生活者の自立支援の一環としての歯科支援活動(市民活動・市民研究)

団体名 歯科保健研究会
代表者名 渡邉 充春
主な活動地域 大阪府

野宿生活者の生活支援としての口腔ケアは咀嚼や摂食のうえでも重要なことであり、社会的自立のうえでも欠くことのできないことを、診察治療を実践研究する中で明らかにしてきたことはこれまでの大きな成果である。こうした実践研究に基づいて、本プログラムは診察治療が受け難い野宿生活者にとっては緊急対応の場としても必要不可欠であると思われる。口腔清掃指導など野宿者自身の自主的な口腔ケアを定着させるとともに、無料診療などの機会を通して、疼痛の軽減、口腔機能の改善を図り、自立への一歩につなげるものになるだろうと、今後の活動に向けて大いに期待したい。

なお、申請にあたり歯科支援活動に必要な医薬品、機材等については消耗的なものであり、継続的に活動を展開していくには、資金の安定的な確保と理解ある人材の確保がともに必要であろう。

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