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2012年度新規助成団体 BIG ISSUE掲載記事

発達に障害のある子どもを対象に「心とからだの講座」
障害のある子、ない子にも命の大切さ伝えたい
-NPO法人 子ども&まちネット

発達に障害のある子どもも、思春期になれば性に目覚め、恋もする。障害のある子の性問題がタブー視される中、全国でもあまり例のない性教育講座を展開するNPO法人「子ども&まちネット(通称=子まち)」理事長の伊藤一美さんと副理事長の田中弘美さんに話を聞いた。

タブーから開放できるか障害のある子の思春期の性

画像:理事長 伊藤 一美さん 理事長 伊藤 一美さん

大人であれば、誰もが一度は経験した悩み多き時代――思春期。初潮や精通など身体の大きな変化とともに戸惑いや不安を抱き、自分は何者かと葛藤して、やがて大人へと成長する大事なプロセスだが、当然ながら発達に障害のある子どもにも思春期は訪れる。ただ、性の不安や疑問を自分で消化できない彼らの場合、障害のない子どもよりも行動上の問題を引き起こしやすいとされる。

長く支援の現場に携わってきた田中弘美さんは、思春期の問題がずっと気になっていたと語る。「どんな障害の重い子でも、あの人がそばにいるとうれしいとか、なんか気になる、近づきたいと思ったりするのですが、恋や性の知識を吸収する力がどうしても弱いため、自分の身体に起きている変化や心の中に沸き起こった好きという不思議な感情が何なのか理解できず、その表現方法もわからないんです。だから、いきなり抱きついてしまったり、人前で性器に触れたりして問題になったりしてしまう。特に親御さんは、障害のあるわが子の性的成熟を〝やっかいなもの〟と捉えがちで、家庭でも学校でも『ダメ! やめなさい!』と一方的に注意するだけの場合が多いので、本人も自分の性を肯定的に受け止められなくなる。まるで彼らだけが誰も好きになってはいけないかのように、性の問題をタブー視していることが多いのです」

また、性教育の欠如は、本人や周囲の問題だけにとどまらない。場合によっては、犯罪の加害者や被害者になってしまう可能性もあるという。
「本人は気になる異性に話しかけたいだけであっても、近づき方が極端だと、地域の中で変質者と呼ばれ、最悪の場合は犯罪の加害者になってしまう。女子の場合も、断る力が弱いために、知らない人について行って被害に遭うなど、障害のある子どもたちの被害や加害は表ざたにならないだけで本当にたくさんある。だからこそ、取り返しのつかないことになる前の早い段階から、身体と心に関する正しい知識を大人がしっかり教える必要があると思います」

「告白・断る・断られる」練習
市民活動だからこそできる講座

写真:「心とからだの講座」のワンシーン「心とからだの講座」のワンシーン

「子まち」は、よく障害児の支援団体と間違われがちだが、実は名古屋市の子ども・子育て支援やまちづくりにかかわる団体をつなぐネットワーク組織だ。子どもを取り巻く環境が激変する中で、子どもの生育には地域社会の大人の見守りが必要との考えから00年に発足した。当初は、各団体が知り合うことを目的に研修会やフォーラムの開催、会報による団体紹介を行っていたが、05年の法人格取得後は、徐々に「子まち」の自主事業を展開。乳幼児の子育て支援をはじめ、年齢の幅を広げながら子どもや若者、大人も集える「ワンストップひろば」、子どもや若者たちが自分たちの思いを社会に反映する「子どもと若者の参画プロジェクト」など、子どもと地域にかかわるさまざまな活動を行ってきた。

 

理事長の伊藤一美さんは「子どもの育ちや命を地域でいかに見守れるかが団体の大きなテーマで、特に大人が子どもの声をしっかり聞き、気持ちに寄り添うことがすべての活動の基本」と話す。

そうした中で、07年頃からは発達に障害のある子どもや若者の支援を開始。特に、福祉を受けるだけの存在として社会から隔絶されがちな彼らの自立・就労に向けた教育プログラムを先鋭的に取り組み、その一環として11年にはファイザーの助成を受けて、発達に障害のある子どもや保護者、支援者を対象にした「心とからだの講座」を開催した。

全10回の講座では、思春期特有の身体の変化や愛と性に関する知識を独自の教材を使って分かりやすく伝え、同時にデート学習と称したロールプレイングゲームで「好きな人への告白」や「断る・断られる」練習も実践。同様の教育機会は全国でもほとんど例がないため、県外からも受講者が訪れるなど定員を超える反響があったという。

「発達に障害のある子どもの支援は、教育委員会の特別支援学級や福祉的なサポートもあるのですが、制度に乗せることで置き去りにされることもある。一人の子どもとして普通に遊びたいとか、若者として恋がしたいとか、大人として仕事がしたいというのは、障害のあるなしにかかわらず誰もが抱く気持ちで、そうした一人ひとりの能力を引き出していくようなことは、市民活動だからこそできることだと思います」

若い支援者の養成と、
仲間とワイワイやる「交流サロン」

写真:副理事長 田中 弘美さん副理事長 田中 弘美さん

「心とからだの講座」の経験を踏まえ、「子まち」では今年度、再びファイザーの助成を受けて二つのプロジェクトを実施する。その一つが、発達に障害のある子どもの保護者と支援者を対象にした「ファシリテーター養成講座」だ。これは、先進的に実施した「心とからだの講座」をさらに広く展開していくため、障害児支援の現場や学校、家庭などで学びを促進していく人を育てるものだが、なかでも支援者の参加を期待していると田中さんは言う。

「障害のある子も思春期ともなると、親の見ていないところで女性ヘルパーさんの身体に触れたりするというようなことが結構あるのですが、ヘルパーも保護者には言いづらく、特に現場の支援者は困っている人が多いんです。そうした時に、愛や性の学習機会を立ち上げてくれる旗振り役が1人いれば、それぞれの現場での学びも広がりますし、支援者の援助技術が上がれば、保護者の意識も変わってくるのではと思っています」

また、もう一つのプロジェクトでは、発達に障害のある子どもと若者のための「交流サロン」を定期的に開催する。

「思春期の身体や性の話は、健常者であれば友達同士で盛り上がったりしながら徐々に学んでいくものですが、障害のある子の場合はそういう場がほとんどなくて、性に関していろいろな疑問をもっているんです。だから、お茶を飲みながら仲間同士で気軽にワイワイやりながら、疑問を解決したり、相談に乗っていければ」という。

いずれのプロジェクトも、障害のある子どもの性教育を継続的に広めていくための取り組みだが、その際のキーパーソンとなるのは、やはり彼らと世代が近い若者だと田中さんは言う。

「たとえば、デート学習のロールプレイングなどで、私たちのような世代が相手役をするのと、女子大生がするのとではリアル感がぜんぜん違うんです。告白を断る練習の時も、私が相手役だと彼らはスパッと断るのに、女子大生には『本当は断りたくない』と言って悩んだりします。これは練習だよと言っても、本気モードになっちゃう。そういうのを見ると、彼らは本当に純粋な気持ちで生きているんだな、だから世間とのかかわりでもより傷つきやすいんだなぁと思えて、目頭がじーんと熱くなったりしますね」

思春期の心と身体を正しく知ることは、引いては命の大切さを学ぶことにつながる。伊藤さんは、障害のある子ども向けの講座を展開する中で、障害のない子どもへの性教育の必要性も痛感したという。

「私たちが伝えたいのは、自分というかけがえのない一つの命がどうやってできたかということ。自分を好きになれば、相手のことも尊重して、お互いの気持ちを大事にしないといけないよと伝えます。これは何も障害のあるなしに関係なく、どんな子どもたちにも必要な教育だと思うんです。何より今、学校での性教育が以前よりも後退している。学校や家庭で性教育ができづらいのであれば、今後は私たちの活動が社会的に認知され、命の大切さを伝えるもっと普遍的なプロジェクトへと発展していけたらと思っています」

NPO法人 子ども&まちネット

00年に、名古屋市の子ども・子育て支援やまちづくりにかかわる団体をつなぐネットワーク組織として発足。05年のNPO法人格取得後は、乳幼児の子育て支援等を行う「ワンストップひろば」や「子どもと若者の参画プロジェクト」など、子どもと地域にかかわるさまざまな自主事業を展開している。07年から発達に障害のある子どもや若者の支援も始め、自立・就労に向けた教育プログラムを行う。

TEL/FAX : 052-768-5914
ホームページ : http://www.komachi-111.com/index.html/

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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