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ファイザー株式会社 Working together for a healthier world より健康な世界の実現のために
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ファイザープログラム 助成団体 THE BIG ISSUE 掲載記事

15年間で1000人。
不登校・ひきこもりの子どもたちに居場所を提供。
悩む親の話を聞き、共有しながら知恵を出す場も創出
-NPO法人 フリースクール風の里

福岡県の北九州市に隣接する行橋市にある、フリースクール「風の里」。15年以上にわたって、不登校・ひきこもりの子どもたちに居場所を提供しながら、学習の手伝いをしてきた。子ども、親、サポーターが同じ目線で向き合える場をつくってきた活動、保護者の悩みに向き合う新たな試みなどについて、話を聞いた。

きっかけは教え子の自殺未遂 学校以外の居場所づくりへ

画像:主宰(団長) 工藤幸安さん 主宰(団長) 工藤幸安さん

「風の里」の子どもたちから、応援団長という意味で「団長」と呼び慕われている工藤幸安さんが、子どもの居場所づくりについて考えるようになったのは95年のことだった。

「当時、私は富山市内で学習塾を開いていました。ある時、うちに通っていた女子中学生が自殺を図りました。未遂でしたが、原因を調べにきた警察から見せられた遺書には、壮絶ないじめ体験が書かれていました」

学校以外の居場所の必要性を感じた工藤さんは学習塾の傍ら、子どもたちと世間話をしたり、一緒に図書館へ行ったりしながら、手探りの活動を始めた。3年後、故郷の福岡県で「いじめや不登校の問題が深刻化している」と友人から聞いた工藤さんは、北九州市で公民館を借り、アルバイトで生計を立てながら活動をすることを決めた。

その頃、地元のラジオ番組で教育コメンテーターをしていた工藤さんの話を聞き、「私も何か協力したい」と申し出たのが、行橋市に住む森本明美さんだった。

専業主婦だった森本さんは、「娘が小学校低学年の頃、学校に行けなくなった同級生の男の子を、お母さんが働いている間、預かっていたことがあり、不登校の問題に目を向けるようになっていた」という。

そんな森本さんの自宅の一部を使って04年の春、「NPO法人フリースクール風の里」が開校した。ところが小中学校の教師やOBの協力を得て、手弁当で始まった活動はやがて資金不足で行き詰まる。その窮地を救ってくれたのが「会員になることで活動を支えてくれた、企業の社長や病院の院長など地元の人たち」だった。

しだいに生徒も増え、森本さんの自宅では手狭になってきたため、今年4月、かつて保育所だった建物に拠点を移した。工藤さんの義理の姉で保育士をしていたかすみさんも、仕事を辞めてスタッフに加わった。「成人した息子の成長期に、私自身忙しくて十分かかわれなかったので、その分もここで10代の子たちと向き合っていきたい」と話す。

現在は不登校・ひきこもりの中高生23人に対する支援のほか、ひきこもりの状態にある成人4人の家庭訪問も行っている。「自分で少しでも動き出さないと、親が先に死んだ後は誰も面倒をみてくれんよ」と根気強く語りかけた結果、12年のひきこもり生活から抜け出し就職した人もいる、と工藤さんは言う。

「風の里」に通う中学生 学校と同等の出席扱い

写真:主事 森本 明美 さん(写真左)/教事 工藤 かすみさん(写真右)主事 森本 明美 さん(写真左) / 教事 工藤 かすみさん(写真右)

「風の里」では火・水・木曜日の9時から15時まで、子どもたちはそれぞれの学習課題に取り組む。教育長との話し合いにより、「風の里」に通う中学生の場合、学校と同等の出席扱いになる。

また、中学を卒業した子どもたちは、アメリカ・フロリダ州に拠点をもち、沖縄に日本支部を置く「アメリカンハイスクールアカデミー」に在籍できる仕組みをもっている。所定の単位を取得すれば、アメリカの私立高校卒業資格を得られるため、日本の私立大学や専門学校を受験できる。テキストは英文で書かれているので、英語の力も身につくという。

体験授業として田植えや稲刈り、高齢者施設への音楽訪問なども行っている。時にお年寄りが涙を流しながら聴き入ってくれる音楽訪問には、思いがけない効用があると工藤さんは話す。

「ある夏、北九州市に住む叔母に連れられて、千葉県から男子中学生が来ました。その日は午後から音楽訪問で、準備に追われているうちに、詳しい説明をしないまま彼を高齢者施設へ連れていってしまいました。司会者として前に立った時、楽団の中に紛れて立っている彼に気づいて『しまった』と思いましたが、『まあ、いっか』と演奏を始めました」

すると男子生徒は歌詞カードを見ながら、美空ひばりの『川の流れのように』など数曲を、演奏に合わせて一緒に歌っていた。演奏が終わり、工藤さんが「ちゃんと説明しなくて、悪かったね」と声をかけると「いや、楽しかった」と返事が返ってきた。それを聞いた叔母は「あんた、しゃべれるやないの」と驚いたという。

この男子生徒は小学生の頃、いじめに遭い、中学には1度も行かないまま4年間ひきこもりの生活を続け、言葉も出なくなっていた。「風の里」には2週間のみの滞在だったが、9月からは中学校に通い始め、感謝の手紙を送ってきたという。

年間200人が参加、親の悩み共有する 「保護者一人会」

写真:高齢者施設への音楽訪問高齢者施設への音楽訪問

これまで、工藤さんと森本さんは子どもたちだけでなく、保護者の相談にも個人的にのってきた。その中で見えてきたのは、「あんたの育て方が悪くて、こうなったんよ」といった周囲からの言葉に深く傷ついている親たちの姿だった。当然ながら親の心理状態は家庭にも暗い影を落としていた。

そこで昨年1月からファイザープログラムの助成を受けて、夫婦関係や人間関係など保護者自身の悩みを相談できる「保護者一人会」を実施したところ、1年で200人近くが訪れた。

森本さんによれば、保護者はどうしても「なんで私だけがこんな目に遭うのか」という思考に陥りがちだという。そんな孤立感をやわらげるために、「一人会で少し元気になった人が、同じ悩みを共有する仲間と前向きな知恵を出し合える場」として生まれたのが「ホッと会」だ。また、ストレスを軽減するため、陶芸や手芸、料理などを楽しみながら、おしゃべりをする「ホッと手作り会」も定期的に開いている。

取材の日は「ホッと会」に参加した4人のお母さんが、子どもの様子や手伝いのさせ方、こづかいの与え方などについて意見を出し合っていた。臨床心理士と家庭児童相談員も同席し、「取り込んだ洗濯物をたたまず、わざと放っておくと、いない間にたたんでくれていた」という話には「いいですね」とうなずき、「人は誰かに認められ、誰かの役に立っていると感じた時に力が湧いてきます。手伝いを習慣化することと、家族だけで抱え込まず、外の人を巻き込んでいくことが大事です」とアドバイス。

「おかげで、子どもを客観的に見られるようになった」という声もあれば、会がきっかけとなり、子どもから自主的に「フリースクール風の里」に通い始めたケースもある。

「私が会から帰ると、中学生の娘が『どんな話をしたん?』と興味をもって聞くようになり、どこかへ行きたいなんて言ったこともなかったのに、初めて自分から『風の里に行きたい』と言い出しました。ここでは『あれもできない、これもできない』じゃなくて、娘の得意なピアノを伸ばしつつ、できることを少しずつ広げてもらっています」と、その女性は話してくれた。

「どんな状況でも、何かきっと方法はあるはず。いろいろな人に相談して、その中から子どものためになるものを選べばいい」と力強いエールを送る工藤さんには、夢がある。

「今、いじめの問題が大きく取り上げられていますが、政府や行政はもっと私たち現場にいる人間の声を聞いてほしい。私たちは、これまで千人近い子どもたちを見てきました。そのたびに親や周りの人たちと知恵を絞ってきたので、現実的な提案ができます。居場所を必要としている子どもたちは全国にたくさんいます。ここを巣立った子どもたちに『風の里』の分校をつくってもらい、この活動を全国に展開していきたい」

これまでの行動力をもってすれば、それが夢で終わることはなさそうだ。

NPO法人 フリースクール風の里

95年に富山市で前身となる活動を開始。04年、福岡県行橋市にて「NPO法人フリースクール風の里」開校。不登校・ひきこもり・中退などで悩む子どもや保護者の相談にのり、物質的・精神的支援をしながら「優しい心をもち、社会性の身についた人間の育成」を目的としている。

〒824-0025 福岡県行橋市東徳永26-2
TEL&FAX : 0930-25-3940
メール : kazenosato@peach.plala.or.jp

  • 「保護者一人会」
  • 初回90分1000円(2回目以降60分1000円)

  • 「ホッと会」
  • 参加費1300円

  • 「ホッと手作り会」
  • 参加費+材料費2000円程度
    予約・問い合わせは
    専用携帯電話090-9409-5652まで。

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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