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ファイザー株式会社 Working together for a healthier world より健康な世界の実現のために
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ファイザープログラム 助成団体 THE BIG ISSUE 掲載記事

人生は問題があって当たり前。
障害のあるホームレス状態の人々を医療や福祉につなぎ、「リハビリ・プログラム」を展開
-認定NPO法人 世界の医療団

「路上には、精神障害や知的障害をもちながら医療・福祉につながれない人がたくさんいる」。この事実を聞き取り調査で明らかにし、彼らの生活能力を引き出す「リハビリ・プログラム」に取り組む「世界の医療団」に話を聞いた。

約6割が精神的な症状、3割以上が軽度知的障害の疑い

画像:「東京プロジェクト」代表・精神科医 森川 すいめいさん 「東京プロジェクト」代表
精神科医 森川 すいめいさん

フランスの医師ベルナール・クシュネル氏は、ベトナムの共産党政権から逃れさまようボートピープルの救援を機に1980年、「世界の医療団」を設立した。

以来、「医療を受ける」という人として当然の権利を守るために、弱い立場の人々に医療を提供しながら、その現状を世界に向けて「証言」する活動を続けている。現在は14ヵ国に事務所を置き、約80ヵ国で300~400のプロジェクトに取り組んでいる。

「世界の医療団」スタッフで社会福祉士の中村あずささんによれば、日本の支部ができたのは阪神・淡路大震災に際し、フランスから緊急医療支援チームが派遣された95年。「それから10年以上、海外への医療支援を続けて力をつけた日本支部に、そろそろ国内プロジェクトを立ち上げようという話がもち上がりました」

その頃、精神科医の森川すいめいさんは、03年に自ら立ち上げたホームレス支援団体「TENOHASI(てのはし)」の活動を通して、路上の変化を見守っていた。

「08年頃から、炊き出しや医療相談の現場で『死にたい』と訴える人や精神的に不安定な人が増えてきました。たとえば『隅田川に飛び込もうとしたら、直前に飛び込んだ人がたくさんの人に助けられたのを偶然目にして、迷惑をかけられないと思った』と言った人がいました。また、20歳代の男性が、『外では眠れない。今日眠れなかったら死んでしまう。睡眠薬はないか』と相談に来たこともありました。その日は薬がなくて渡せずにいたら『何とかします』と言ったきり、いなくなってしまいました」。

このような出来事をきっかけに、森川さんら「TENOHASI」のメンバーは08~09年の年末年始にかけて80人、09~10年の年末年始にかけて168人を対象とした聞き取り調査を都内の路上で行った。その結果、精神的な症状のある人が約6割、軽度から中等度知的障害と推定される人が3割以上、自殺リスクのある人が半数以上にのぼることがわかった。

この調査で心理テストを担当した臨床心理士の森玲子さんは、路上で出会った人々の印象を次のように語る。

「彼らは特別変わった人たちではないというのが私の印象です。ただ、感覚が過敏だったり、体質が弱かったりといった『脆弱性』をもっている人は多い。そういう外から見てもわからないハンディのある人が、貧困や親のアルコール問題、虐待など自分では選べない不利な環境に置かれ、がんばっても“ありのまま”を認めてもらえず、家庭や社会で、その人にとって適切でないかかわりを受け、必要なサポートを得ることができなかった。その結果、さらに不利な環境に追い込まれ、うつ症状などの“二次被害”を起こしている人もいました」

一方、森川さんは10年近く前から、「路上には障害をもっている人が多い」という話を先輩の精神科医から聞いていた。しかし長らく日本ではタブーとされてきた事実なため、調査結果の公表に対して「偏見を助長する」などの批判も寄せられたという。

医師、福祉士、心理士など、30人の専門家が参加

写真:「東京プロジェクト」担当 社会福祉士 中村 あずささん「東京プロジェクト」担当
社会福祉士 中村 あずささん

この調査で浮き彫りになった「障害のある人が医療や福祉にアクセスできていない現状」を受けて「世界の医療団」日本支部は2010年4月、「東京プロジェクト」を立ち上げた。医療・福祉を必要とするホームレス状態の人々への支援を目的としたもので、本部のあるフランスではすでに取り組んでいる課題でもあった。

北海道浦河町で精神障害者の地域活動拠点となっている「社会福祉法人 浦河べてるの家」や「TENOHASI」ともタッグを組み、森川さんはプロジェクトの代表に就任。現在は精神科医、臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、非専門職など30人近いスタッフがかかわっている。

中村さんによれば夜回り、医療・福祉・生活相談、病院や福祉事務所への付き添いのほか、都内に設けられたサロン「ハナマイ」では「当事者の生活能力を引き出し、コミュニケーションに慣れてもらう」ための「リハビリ・プログラム」も行っている。

毎回5~15人が参加するプログラムのメニューは曜日によって変わる。ヨガなどの運動や料理教室の日もあれば、地域のベーカリーでパンを焼く日もある。

「そのベーカリーはもともと夜回りで配るパンを寄付してくれていたのですが、奥さんが亡くなってからは店を閉め、だんなさんが夜回りの日だけ一人でパンを焼いていました。そこへ多い時には15人くらいで押しかけてパンづくりを手伝っているうちに、みんな上達し、今ではメロンパンやベーグルも焼けるようになりました。これまでにイベントでも5、6回、販売しましたが評判はよく、店のご主人も元気を取り戻したようです」

新しい自分の助け方を、全員で探る「当事者研究」

写真:「東京プロジェクト」担当
臨床心理士 森 玲子さん「東京プロジェクト」担当
臨床心理士 森 玲子さん

森川さんは今年のゴールデンウイーク、日本で自殺が最も少ない地域の一つ、徳島県海陽町(旧・海部町)を訪れた。「あちこちにベンチがあり、おばあちゃんたちも座り慣れていて、東南アジアを旅しているかのように気軽に話しかけられる」というこの町には、400年前から続く「朋輩組」と呼ばれる仕組みがある。

「ほぼ同世代の人たちが10人くらい集まって話し合う互助グループのようなもので、入退会は自由。規則も罰則もありません。『人生は問題があって当たり前』というコンセプトのもと、何か課題が生じれば集まって解決策を話し合う。結果的にコミュニケーションの練習をしているようなものですし、その上情報集積もされるから、課題解決の技術も高くなって危機介入が早いんです」

現地に滞在中、急に歯が痛くなったという森川さんは旅館の人に相談した。すると、近所の人たちが「歯医者を呼びに行こう」「82キロ先の歯医者が診てくれるから送っていこう」などとさまざまな案が出て、あっという間に解決したという。

「普通は何か課題を出すとお荷物扱いされてしまうが、ここでは違うと感じました。誰も『申しわけない』と口にしないし、会計に時間のかかるお年寄りも店で堂々と振る舞っている。人の目を気にしなくていいから、うつ病の受診率も逆に高いのだそうです」

これに近い取り組みは、プログラムでも行われている。毎週木曜日、「浦河べてるの家」の関連法人である「べてぶくろ」が主催する「当事者研究」だ。「ハナマイ」に集うメンバーが自分の課題を発表し、それを全員で研究する。

「今まで、どうやって自分を助けてきたか。他の人はどうやってきたのか。出し合うことで、新しい自分の助け方を考えて実験する。実験だから失敗してもいい。試した結果、よかったかどうかを次の機会に発表します。これを仲間とやるのがいいのです。弱さが絆になっていく」と森川さんは言う。このプログラムは事前に予約をすれば、見学することができる。

さらに週末には、臨床心理士の森さんが一対一で相談にのる「週末報告会」が用意されている。人前で言えなかった問題は、ここで一緒に解決策を考える。

森川さんによれば、「死にたい」というメールを1日100通近く送ってきていたが、ここへ通ううちに、大勢を前にしたステージの上でも話せるまで回復した人もいるという。

「ここへ来る一人ひとりがもともともっている力を発揮して、これまで苦労してきたことを経験値に変えて、これからの日本を変えていってほしい。今の日本は『ハナマイ』のような人が変えていくのだと思う。彼らは私たちにとっての“希望”です」とも森川さんは言う。

「東京プロジェクト」には、サポートする人たちのそんな思いが託されている。

認定NPO法人 世界の医療団

1980年にフランスで設立。世界各地に医療・保健衛生分野の専門スタッフを派遣し、人道医療支援に取り組む国際NGO。弱い立場に置かれた人々に「医療」を提供するのみならず、現地政府と協力して保健医療システムを構築・再構築し、医療人材を育成。支援の現場で知り得た現実や真実を広く世界に「証言」する。95年の阪神・淡路大震災発生時、フランスからの緊急医療支援チームが派遣されたことを機に日本支部発足。07年には「認定NPO法人」となった。

〒106-0044 東京都港区東麻布2-6-10麻布善波ビル2F
電話 : 03-3585-6436
FAX : 03-3560-8073
ホームページ : http://www.mdm.or.jp/

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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