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ファイザー株式会社 Working together for a healthier world より健康な世界の実現のために
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2011年度助成団体 BIG ISSUE掲載記事

地域ごとの支援チームづくり、ピアサポーター養成講座。
一人ひとりの症状が違う高次脳機能障害者に“就労のチャンス”を広げる
-NPO法人 ほっぷの森

交通事故や転倒などによる外傷性脳障害などで、記憶・意思・感情といった脳の機能に障害が出る場合がある。
この「高次脳機能障害」をもつ人たちに就労のチャンスを広げようと宮城県で奮闘する「NPO法人ほっぷの森」に、現状と活動の展望を聞いた

レストラン、フードマーケット。障害者の就労トレーニング

画像:理事長 白木福次郎さん 理事長 白木福次郎さん

「NPO法人ほっぷの森」理事長を務める白木福次郎さんと副理事長の深野せつ子さん。地元・仙台で会社をそれぞれ経営している二人は、95年、知的障害者にスポーツトレーニングや競技会を提供する「スペシャルオリンピックス」にボランティアとして参加し、そこで知り合った。

その後、知的障害者の通所授産施設(現・就労継続支援B型事業所)で理事長を務めることとなった白木さんは、「障害者の就労支援には、雇用者側の視点に立った現実的な就労トレーニングをするスキルが必要」なことに気づき、問題と課題を感じた。

そこで07年2月、この問題意識に共感した深野さんらと、仙台市内に「就労支援センターほっぷ」を設立。一般企業への就労をサポートしながら、翌年には知的障害者の“職場体験の場”として、同市内にイタリアンレストラン「長町遊楽庵びすた~り」をオープンした。

築120年の町屋風古民家を改装したレストラン店内には、地元の若手テノール歌手から「店に置かせてほしい」と託されたピアノ(ベーゼンドルファー)が置かれ、これを活用したコンサートやピアノの発表会がたびたび開かれている。

また、レストランから歩いて10分ほどの場所には、びすた~りファームで育てた無農薬野菜を販売する「びすた~りフードマーケット」を開設し、知的障害者の“働く場”を広げていった。

高次脳機能障害者の就労支援も。 「先輩会」、卒業生からのアドバイスが励み

写真:副理事長 深野せつ子さん副理事長 深野せつ子さん

現在、「ほっぷの森」は、知的障害者の支援と高次脳機能障害者の就労支援に取り組んでいる。きっかけは、07年9月、白木さんらが宮城県障害者職業能力開発校からの委託で高次脳機能障害者を対象とする講座を開いた時に、初めて当事者や家族の苦悩を知ったことだった。

白木さんによれば高次脳機能障害の症状は人それぞれで、たとえば「記憶障害や、自分が今どこにいて何をしているのかわからなくなる『見当識障害』、自分から何かを始めようと動き出す『発動性』の低下、脳の障害によって片側の情報しか認識できないせいで、絵を描いても輪郭が半分しか描けない『半側空間無視』などの症状」が現れるという。

「しかも当時は今より情報が少なく、自分がなぜそうなったのかも理解できないまま、自信をなくしている人もいましたし、本人に病識(自分が病気であるという自覚)がなく、『大丈夫です』とできないことを引き受けてしまい、フォローに奔走して疲れ果てている家族もいました」

この現状を受けて「就労支援センターほっぷ」では、高次脳機能障害の特性に沿ったカリキュラムを開発。カリキュラムでは「コピーライターやフリーアナウンサーなどの専門家による文章指導やボイストレーニングのほか、記憶すべきことをメモするメモリーノートの使い方などもレクチャーしている」という。

こうした就労支援を続ける一方で、「長町遊楽庵びすた~り」でも高次脳機能障害のある人を受け入れ、他の障害の人も含め、現在11人が働いている。

「集中力や記憶力が続かないため、盛りつける料理の量が多くなったり、豆をむいた後の殻と実が混ざってしまったりすることもありますが、そんな時はサポート役が声をかける。同じことを繰り返せば、わずかずつではありますが積み重ねていくことができます。本人も家族も私たちも、あきらめないことが何より大切です」と深野さんは言う。

「就労支援センターほっぷ」のサポート期間は最長2年だが、就労後も採用企業や本人からの相談に乗り、必要があれば支援機関にもつなぐ。それでも会社を辞めてしまった場合はプログラムを受け直し、新たな就職に向けて再チャレンジできる。

「定期的に『先輩会』を開き、プログラムを卒業した先輩が、どんな会社でどんな仕事に就き、どんな苦労をしているのか、生きたアドバイスをもらうようにもしています。先輩会に出ることが一つの目標になりますし、先輩同士も『あいつもがんばっているから自分もがんばろう』と励みにしているようです」

支援される側からする側へ ピアサポートを仕事として確立したい

写真:スタッフ(利用者)ミーティングスタッフ(利用者)ミーティング

はっきりしたデータはないが、かつて福岡県で実施された実数調査から推測して、宮城県内には1400~1500人の高次脳機能障害者がいるといわれている。「ほっぷの森」では県の助成を受け、09年9月から10年1月にかけて、高次脳機能障害者と家族を対象にした実態調査を行った。

その結果見えてきたのは、「仙台市を一歩離れた途端に支援機関が激減してしまう宮城県の実態」だった。そこで宮城県内の7つの保健圏域で当事者や家族、医療関係者、支援者などをつないだ高次脳機能障害の研修会を実施。理解をより深めてもらうためにハンドブックを作成しようとしていた矢先、11年3月11日の東日本大震災が起きた。

その後、ハンドブックはどうにか完成したものの、当初予定していた「宮城県内で高次脳機能障害支援に携わる人を緩やかに結ぶネットワークづくり」までは、助成期間内に終えることができなかった。

そこでファイザープログラムに応募し、その助成を受けて12年6月に発足したのが「宮城高次脳機能障害連絡協議会・どんまいネットみやぎ」だ。

「これは現場で高次脳機能障害にかかわっている理学療法士や作業療法士、ソーシャルワーカーなどの専門家を結ぶネットワークで、高次脳機能障害者が宮城県のどこにいても支援を受けられるように、地域ごとの支援チームづくりをサポートし、各チーム間の情報共有の場を提供することを目的としています」と白木さんは話す。

深野さんによれば、ネットワークづくりを進める中で、予想していた以上の成果をあげた地域もあったという。

「たとえば、気仙沼では初めから当事者と家族だけの交流会ではなく、あらゆる立場の方が参加する“地域交流会”の開催が実現し、今年3月には、高次脳機能障害者の家族、理学療法士と作業療法士、福祉関係者が中心となって、これまで気仙沼にはなかった就労移行支援事業所『就労サポートセンターとれいん』を開設することができました」

こうして宮城県内の7つの保健圏域に支援チームづくりを目指して、「どんまいネットみやぎ」では次なるステップとして、高次脳機能障害の当事者と家族が同じ立場にある人を支えるための「ピアサポーター養成講座」を開催している。

5回にわたって高次脳機能障害の特性や対応方法、支援事業、ピアサポーターの役割などについて学ぶ「ピアサポーター養成講座」はすでに仙台と石巻で実施されている。

「高次脳機能障害は一人ひとりの症状が違い、理解されにくい障害なので、気持ちをわかり合える家族同士の結びつきはとても大切です。ただ、支援される側から支援する側になろうという方は、まだそんなに多くないのが現状です。将来はピアサポートを一つの仕事として確立し、当事者や家族が病院や行政の窓口で同じ悩みをもつ人の相談に当たれるようになればいいなと思っています」

来年度は養成講座や講習会、セミナーなどへの出席をポイント制にして、一定のポイントが貯まれば「生活支援員」として現場で働ける仕組みをつくりたい、と最後に白木さんは今後の目標を話してくれた。

NPO法人 ほっぷの森

障害のある人が一般就労する機会の少なさを痛感した有志が集まり07年2月、「有限責任事業組合(LLP)就労支援センターほっぷ」を設立。
企業経営者、大学名誉教授、臨床心理士、フリーのアナウンサー、コピーライター、福祉施設の役員などが講座を受けもつ。08年1月には「NPO法人ほっぷの森」として生まれ変わり、就労移行支援事業と就労継続支援事業A型(雇用型)及びB型(非雇用型)の3つの多機能型福祉サービス事業所として現在に至る。高次脳機能障害や知的障害のある人が寄り添い型、伴走型の支援を受けながら自らの気づきのトレーニング(講座と職場体験)を積み重ねながら就職の機会を得ることに挑戦し、それを実現し、維持するための活動に取り組み、実績を上げている。

〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町1-2-5第三志ら梅ビル4階
TEL : 022-797-8801
FAX : 022-797-8802
ホームページ : http://www.hop-miyagi.org/

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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