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ファイザー株式会社 Working together for a healthier world より健康な世界の実現のために
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2013年度助成団体 BIG ISSUE掲載記事

ホームレス問題と自転車問題を同時に解決
ホームレス状態を生み出さない日本へ
-NPO法人 Homedoor(ホームドア)

豊かなはずの日本の路上で、なぜ凍死や餓死する人がいるのか―。
そんな疑問から、ホームレス状態を生み出さない日本を目指してさまざまな事業を行う「Homedoor(ホームドア)」。
理事長の川口加奈さんとプロジェクトマネージャーの小林大悟さんに話を聞いた。

ホームレスの特技を活かす「シェアサイクル事業」

画像:代表 菅田紀克さん 理事長 川口加奈さん

大阪・梅田から徒歩15分。静かな住宅街にあるHomedoorの事務所は、一軒家を改装したちょっとオシャレな外観。軒先にはメイン事業であるシェアサイクル「HUBchari(ハブチャリ)」の自転車がズラリと並ぶ。

HUBchari は大阪市内に展開する複数の拠点(1日利用は7拠点、月額利用は18拠点)で、1時間100円から自転車をレンタルできるサービス。どの拠点で借りてもどこで返してもいい、レンタサイクルの進化版だ。このHUBchariの運営を担うのがホームレスや生活保護受給者たちで、現在約50人(行政委託の自転車啓発指導員含む)が就労しているという。

「空き缶回収などで自転車に何キロもの荷物を積んで走るホームレスの人たちにとって、自転車修理はほぼ共通した特技。その特技を活かして、貸し自転車の修理や整備、一部拠点での貸出業務などを担ってもらっています」と小林大悟さん。HUBchariはホームレスの就労支援と同時に、迷惑駐輪や放置自転車を緩和するシェアサイクルを広め、大阪で特に深刻なこの二つの問題を解決する取り組みともいえる。利用者が便利さを求めて自転車を借りると、それがホームレス支援につながる。ホームレスの人たちにとっても自分たちの仕事が自転車問題の解決に役立つことで、やりがいを持って働くことができる。
「アメリカやフランスなどの海外では、地球環境問題やCO2の抑制からシェアサイクルがすごく発達している。日本でも行政中心に東京や神戸などで取り組みが進んでいて、HUBchariも外国人観光客やビジネスマンを中心に利用客が急増中で、うれしい悲鳴を上げています」

きっかけは、路上死 そして中高生の野宿者襲撃

写真:雑木の伐採から始まる休耕地の開墾自転車磨きに精を出すHUBchariスタッフ
写真:豊作の願いを込めて田植え当事者やボランティアが集まって夜回りの準備

Homedoorの設立は、2010年4月。「ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくる」ことが目的だったが、設立には代表を務める川口加奈さんの体験が大きかった。川口さんは「豊かな日本で、なぜホームレスになる人がいるのか」との疑問から、14歳の時に釜ヶ崎の炊き出しに参加。そこで日本の路上で凍死や餓死する人がいることを知るが、ホームレス問題を学ぶ中で何より驚いたのは自分と同世代の中高生が野宿者を襲撃する事件を起こしていることだった。「ホームレスは社会のごみ。俺たちはごみ掃除をしてあげている……」。そんな言葉にショックを受け、ホームレスと少年たちの最悪の出会いを食い止めたいと、学校での講演活動などを通じてホームレス問題にかかわり始めたが、状況は変わらなかった。そうした中で、啓発活動や炊き出しなどの対症療法的な活動だけではなく、問題の根本的な解決のためには、ホームレス状態を生み出さない社会こそが求められているとの思いに至り、19歳の時にHomedoorを立ち上げた。

西成区に生まれ育ち、ホームレス問題を身近に感じてきた小林さんもこう説明する。
「Homedoorはホームレス支援というよりも、当事者と一緒に考えながら事業を立ち上げ、できるだけ多くの社会インフラを生み出していこうとする団体。特にスタッフの平均年齢が25歳と若いので、従来なかった支援の新しい選択肢を提示することで、これまでホームレス問題に無関心だった層にも訴えかけていきたい」という。

現在は、「出口づくり(就労支援)」「入口封じ(生活支援)」「啓発活動」の3つを柱に9つの事業を展開。出口づくりでは、「HUBchari」やビニール傘のリサイクル事業「HUBgasa」など、望まずしてホームレスになった人たちの就労支援事業を行い、「入口封じ」では社会的な孤立状態から脱するための各種イベント・講座を提供する「CHANGE!」プログラム、野宿者支援の夜回り活動「ホムパト」などの生活支援を実施している。また、「啓発活動」においては、リアルな貧困の現場と向き合うまち歩き「釜Meets」や「講演・ワークショップ」などを通じて、ホームレスへの偏見をなくし襲撃事件を防ぐ取り組みを行っている。

ネットカフェ難民に相談のバナー広告!

写真:宿根草の苗を植えているところプロジェクトマネージャー 小林大悟さん

こうした9つの事業の中でも、特に最近、力を入れているのが2014年にファイザープログラムの助成を受けて実施している「ホムネット」だ。これは、就労希望の当事者を一人ひとりの特技や得意分野に応じて企業の求人にマッチングさせる就労支援システムを構築するもので、企業との連携も積極的に推進。この一環として昨年11月には、大手ネットカフェの協力を得て同店舗のパソコンにHomedoorのバナー広告を貼り、ネットカフェ難民の相談受付を開始した。
「バナー広告をきっかけに、夜回り活動だけでは捕捉できなかった人たちの相談が増え、年間相談者が100人近くになっているので、企業とのマッチングを通じて、働きたい誰もが働ける社会にしていきたい」と小林さん。

また、当事者の生活支援施設「&house」をオープン。自由に使える洗濯機やお昼寝スペース、キッチンなどを完備して、路上脱出を応援している。
「今後は、企業さんとタッグを組んだ就労支援プログラムに挑戦すると同時に、&houseの取り組みをケーススタディーにシェルターも整備していきたい。そうすることで、路上に出る前にHomedoorに行けばなんとかなるというかたちをつくっていければ」という。

「Homedoor」という団体名には、駅の転落防止柵(ホームドア)のように人生の転落防止柵の役割を果たしたいという思いと、誰もが帰ることのできる「温かいホーム(居場所)への入口」という二つの意味が込められている。
「子どもの頃からずっと不景気の中で育ってきた僕たち若い世代は、仕事をなくすことに恐怖を感じているから、自らの人格をすり減らしてまで就職活動に躍起になる。でも、ホームレスを生み出さない、誰でも何度でもやり直せる社会をつくることができれば、もっと楽しく働き、生活していけるんじゃないかと思うんです」

NPO法人 Homedoor(ホームドア)

10年4月に任意団体を設立。ホームレス状態を生み出さない日本の社会構造をつくることを目的に事業を開始する。11年3月にNPO法人取得。シェアサイクル「HUBchari(ハブチャリ)」の運営をはじめ「就労支援」「生活支援」「啓発活動」の3つを柱に9つの事業を展開している。

TEL : 06-6147-7018
ホームページ : http://www.homedoor.org/

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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