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2015年度助成団体 BIG ISSUE掲載記事

「ブラインドメイク」、当事者とともにつくり上げる。
道具に頼らず、視覚障害者自身がフルメイクアップ
-日本ケアメイク協会

化粧から遠ざかりがちな視覚障害者が鏡を見ずに自分でフルメイクアップできる方法を確立するなど、化粧をしたくてもできなくなった、しなくなった、あきらめた人々に、メイクの支援をしている「日本ケアメイク協会」。当事者を主体とした化粧のトレーニング方法と世界各国のニーズを視野に入れた、これからの展開を聞いた。

化粧をあきらめている視覚障害者 20分ほどでフルメイクが可能に

画像:代表 大石 華法さん 代表 大石 華法さん

「日本ケアメイク協会」は2010年、大石華法さん(代表)と視覚障害者の女性たちが立ち上げた。その後、視覚に障害のある女性を中心に、高齢や認知症、精神障害などハンディを持つ人々のQOL(生活の質)を向上させる「ケアメイク」の活動に取り組んできた。

そもそものきっかけは、08年ごろ、理容師資格をもつスタイリストの大石さんが視覚障害者支援のボランティアをしていた時に、「多くの視覚障害者が化粧をあきらめている現状」を知ったことだった。「化粧は女性の潜在的な美意識に働きかけることで、自己肯定感が高められ、自信を持つことができるようになる心理ケアから、外出が増えたり、社交的になったりするなど、リハビリテーションも含め、多くの支援要素が含まれている」と大石さんは考えている。当時、海外に“特別な道具を使い、誰かのサポートを受けて化粧をする方法”はあったが、大石さんは「他人に頼らず、当事者が自分自身でフルメイクアップできる方法はないか」と考え、手と指を化粧道具として使用する「ブラインドメイク」を考案した。
「視覚障害者の指先はとても敏感。指先にパウダーを載せ、感触を確かめながら、左右の手をワイパーのように、同じ強さ、同じスピードで動かせば、アイシャドーもアイブローもチークも口紅も左右バランスよく塗れることに気づきました」

これまでに「ブラインドメイク」を受講した視覚障害者は120人ほど。中には「今まで化粧をしたことがないけど、してみたかった」というトランスジェンダーの全盲男性も3人いた。

画像:両手指を使ったアイシャドーレッスン 両手指を使ったアイシャドーレッスン

元受講生でスタッフの一人、松下惠さんは41歳の時、網膜剥離で視力を失った。「これまでの方法だと、どうしても口紅がはみ出てしまう。他人からどう見られているのかと思うと自信がなくなり、化粧をいつしかあきらめ、外出することも減って家にひきこもりがちになっていた。せめて口紅だけでも習おうと5年前、わずかに残っていた視力を頼りに通い始めた」ことから、今では20分ほどでフルメイクができるようになったという。
「街中で『手伝いましょうか?』などと声をかけられることが増えました。きっと化粧をしたことで顔を上げることができ、前向きな気持ちが周囲に伝わっているんでしょうね。かつての私のように、化粧ができなくなったと泣いている視覚障害者に『ブラインドメイク』を教えて、一人でも多くの人を笑顔にしたい」

「化粧訓練士」、晴眼者も参加 HPに国内外からアクセス殺到

写真:韓国の視覚障害者団体でのビューラーレッスン韓国の視覚障害者団体でのビューラーレッスン

そんな松下さんはじめスタッフの「ブラインドメイク」を広めたいという思いが、「ファイザープログラム」の助成を受けて実現することになった。大石さんは言う。「まずは視覚障害者のために、画面を見ることができなくても、音声で文字情報を聞くことができるホームページを立ち上げました。アクセス数は月に2~5万件。国内だけでなく韓国や中国、ベトナム、シンガポールなどからも講習会の依頼や問い合わせが相次いでいます。先日は『ホームページを見て、ずっと講習に参加したいと思っていた』というWendi(ペルーの全盲女性)がやっとの想いで講習会に参加されて、私に会いに来てくれました。彼女はブラインドメイクを母国にいる視覚障害者の友人たちに広めたいとの想いから、日本語のブラインドメイクテキストをスペイン語に一所懸命翻訳してくれました」

写真:スタッフ 松下 惠さん(写真左)/研修生 大貫 二三恵さん(写真右)スタッフ 松下 惠さん(写真左)/研修生 大貫 二三恵さん(写真右)

これまでは、拠点を置く大阪での個人レッスンを基本としてきたが、国内外での需要の広がりから、視覚障害者にブラインドメイクを教える「化粧訓練士」の養成も始めた。
「晴眼者を対象とした資格ですが、そのトレーニングを担うのはブラインドメイクを習得した視覚障害者の女性たちです。『視覚障害』といっても、全盲・弱視・先天性・中途など、見え方は人それぞれ違う。一人ひとりのニーズに合わせた指導が必要なので、視覚障害者が、受講者に伝わりやすい表現などを的確に伝えます。当事者が晴眼者に自分たちの理解と共にブラインドメイクを伝えることに、大きな意味があるのです」

化粧訓練士の研修生の一人、大貫二三恵さんは東京都内の眼科で視能訓練士として勤務しながら講習に通う。「専門家として30年間リハビリに携わってきましたが、ここで出会った全盲の女性から、『アイマスクをしている時としていない時では風や温度の感じ方が全然違う』と言われて、はっとしたんです。睫毛を揺らす風からも“見えている”ことがあるんだと。つい晴眼者視点で見てしまう医療現場で気づけなかったことを学んでいます」と話す。

中学3年の時に視力を失ったという当事者のHさんも、化粧訓練士の養成に協力している。「どうすれば『ブラインドメイク』をより使いやすいものにできるか、視覚障害者と一緒につくり上げていく仕組みがすばらしい。視覚障害者と晴眼者の架け橋になれたらうれしいです」

「ケアメイク」を確立したい 相談内容をホームページで公開

HPの立ち上げによって多くの相談が寄せられるようになると、これまでメールで個別対応してきた相談内容を「Q&A」形式でまとめ、ホームページで公開した。さらに、20~70代までの視覚障害者がブラインドメイクを行う様子を撮影した、年齢別の映像を編集中だ。「この動画の公開や教材用のDVDの作成に加え、これからは各地で講習会を開催して化粧訓練士を増やし、『ブラインドメイク』を日本だけでなく、世界中に広めていきたいと思っています。また、ホームページを多言語対応にし、世界からのニーズにも応えていくつもりです。『ブラインドメイク』をとおして世界中の視覚障害者の女性たちと国際交流していきたいですね」と大石さんは意欲を見せる。

一方で「化粧療法」は、補完代替医療として学術的には正式に確立していない現状がある。そのため大石さんは、日本福祉大学大学院 福祉社会開発研究科で、化粧を療法やリハビリテーション、ルックス・ケア(※)とした研究をしている。「医師や理学療法士、作業療法士との共同研究の中で検証を積み上げて、医療や看護、福祉などの幅広い分野で役立てられるようにしていきたい」。大石さんの挑戦は続く。

※疾病、障害、事故などが原因で自分自身のルックス(見た目)に自信を失った人のために、専門分野からのサポートにより、再び自信を取り戻すことを目的としたケア

日本ケアメイク協会

2010年に設立。化粧を通じて女性の「美しくありたい」という願いを形にすることで、女性のQOL向上を図る。障害、疾病、高齢、認知症などにより、化粧をしなくなった・できなくなった・あきらめた人たちに向けたケアメイクの活動に寄与。その一環として、視覚障害者を対象とした「ブラインドメイク」の普及に努めている。

ホームページ : http://www.caremake.jp/
問い合わせ : info@caremake.jp

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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