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2015年度助成団体 BIG ISSUE掲載記事

「関東・東北豪雨」で格差が広がった地域社会
浮上した空き家問題と就労支援を融合した「ジョブトレーニング」の可能性
-認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ

社会課題解決のため、人や組織を育て、情報の提供や発信をしながら市民団体の活動をサポートする中間支援組織「茨城NPOセンター・コモンズ」。昨年9月の「関東・東北豪雨」で大きなダメージを受けたが、この水害により浮上した空き家問題に、ひきこもり経験者のマンパワーを投入する「ジョブトレーニング」をスタートさせた。

日系ブラジル人に寄り添う 就労支援ネットワークの構築

画像:代表理事 横田 能洋さん 代表理事 横田 能洋さん

現在、代表理事の横田能洋さんはNPO法の立法運動にかかわり、同法が成立した1998年に「地域で課題解決の提案ができるNPOを育て、企業との橋渡しをすること」を目的とした中間支援団体「NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ」を設立。NPO法人設立支援を行う傍ら、ひきこもりの若者や外国人など、制度の狭間に落ち、社会的排除に遭いやすい人に寄り添うことを心掛けてきた。

2002年には、ファイザープログラムの助成を受けて水戸市に「コミュニティレストランとらい」をオープン。「ひきこもり経験をもつ若者の中間的就労の場をつくりました。5年間の試行錯誤を経たあと『NPO法人とらい』として独立。利用者の運営によって10年以上続いています」

08年のリーマン・ショック以降は在日外国人の就労支援もスタートさせた。「僕が暮らす常総市にはもともと食品工場などで働く日系ブラジル人が多く、子どもが通う小学校も1割近い児童が日系ブラジル人でした」

派遣切りに遭い、橋の下などでの暮らしを余儀なくされている県外での日系ブラジル人の現状をテレビで知った横田さんは、地元で日系ブラジル人にかかわる企業や学校などにヒアリングを実施し、必要に応じて日本語研修や就学・就労相談などを展開した。さらに、県の委託で3ヵ月間の職業訓練を行ったところ、3年間で約30人がホームヘルパー2級(介護職員初任者研修)を取得し、それぞれの就職につながった。

「ところが、せっかく就職しても、ちょっとしたコミュニケーション不足による行き違いで、多くの人が辞めてしまった。就労支援は、誰かが常に職場と本人をつないでフォローする伴走型であることが大切だと痛感しました」
そこで、「地域のさまざまな支援機関をネットワークで結び、伴走型の就労支援の仕組みを構築しよう」と、14年に再度ファイザープログラムに応募し、助成を受けることとなった。

水害で広がった住民の格差 放置された空き家問題も深刻

写真:浸水被害を示す地図浸水被害を示す地図

助成1年目は、県外の中間的就労支援の成功事例について、県内のNPOや社会福祉協議会の就労支援員を招いて共に学んだ。
「たとえば農家から収穫に20人来てほしいと急な要望があった場合、一団体では対応できなくても、ネットワークがあれば断らなくてよくなる。一緒に職場を開拓し、ジョブトレーニングのスキルも上げていきましょうという、ゆるやかな合意をつくることができました」

また、茨城県西地区の福祉課や児童相談所、教育委員会、高校などの関係者によるネットワーク会議も開催した。「高校を中退し困難な状況に陥っても、情報がないと10年以上経ってやっと若者サポートステーション(※)につながるのが現状ですが、ネットワークがあれば高校在学中に地域の支援情報を伝えることできます」

助成2年目は、県内5つの地域でネットワーク会議を開き、15年4月に始まった困窮者支援制度が機能する仕組みをつくる予定だった。ところが9月、「関東・東北豪雨」が常総市を襲った。コモンズの常総事務所も1階が浸水し、横田さんらも被災。そんな中、ボランティアの受け入れや外国人被災者に必要な情報を、ポルトガル語など3つの言語に訳し、災害FMで流すなどの対応に奔走した。「避難所や農家などを回って得た情報を全国から来た支援団体とも共有しながら、市役所にさまざまな提案をし、復興計画にも外国人や子連れの母親、高齢者や障害者の声を反映してもらいました」

水害は住民の格差も広げた。「若い世代や水害対応の保険に入っていた人は、家を建て替えることができました。家を建て替えられない人やアパートが修復されない人などは、市外にある2年間無償の国家公務員宿舎などに避難しています」

放置された空き家の問題も深刻だ。「このままでは避難者が戻ってきても住むところがない。こんな時こそ、働く力はあるのに場のない人たちにハウスクリーニングやシロアリ駆除などのジョブトレーニングをして、事業体をつくっていきたい」と横田さん。その第一歩として「JUNTOSハウス」修復を進めている。

ひきこもり当事者、電気技術者 経験が活きるジョブトレーナー

写真:ジョブトレーナー 瀬谷 哲彦さんジョブトレーナー 瀬谷 哲彦さん
写真:家の修復も訓練の場家の修復も訓練の場

コモンズが開設した「グッジョブセンターみと」には現在約30人の利用者が登録。「30、40代の男性が多く、職歴のブランクが長いなどハローワークでは就労が難しい人がほとんど」だという彼らに3、4人のジョブトレーナーがついて、就労支援を行っている。

水害により住めなくなった建物を提供してもらった「JUNTOSハウス」をジョブトレーニングの現場の一つとして活用。トレーニング生もかかわって補修が進んでいる。元電気技術者で、その後ハローワークで就労支援をした経験と趣味の家具づくりの技術を活かし、昨年11月からジョブトレーナーを始めた北野寿久さんは「ここで自信をつけ、東京で就職活動している20代の男性もいるんですよ」と話す。

昨年5月からジョブトレーナーを務める瀬谷哲彦さんは「僕自身もひきこもっていました。自分の経験を話すと利用者さんも話をしてくれるようになり、だんだんいい顔になっていくのがうれしい」と言う。

取材の日には、十数年の仕事のブランクがある男性利用者がシンクのサビを丁寧に落としていた。「今年2月から壁紙を貼ったり、本棚のニスを塗ったりしている。建物ができあがっていくのを見るのは楽しい。ここへ来てから、パソコンの練習も始めました。いずれは仕事に活かしたい」と話す彼の提案で、玄関には下駄箱が設置されることも決まった。

「このハウスが完成したら、勉強や進学で困ることが多く進路が限られやすいブラジルやフィリピンの子どもたちの学習の場にしたい。また、キャリアデザインの支援拠点、そして若い世代が国籍を超えて交流する場にもしていきたいです」と横田さん。
「NPOの基盤整備の支援を続けてきましたが、すでにあるNPOを支援する一方で、全体を見渡して足りないところには新たなモデル事業をつくったり、行政に提案するのも私たち中間支援組織の大切な役割だと考えています」

今年4月には、常総事務所を、地域の元老舗ビジネスホテルに移転。「今晩寝るところがない人に部屋や風呂を提供できるようにし、今後は周辺の空家も含めて、高齢者や外国人などサポートが必要な方向けに多世代の共同住宅として活用していきたい。空き家や生活困窮、就労支援は全国的な問題。ここで築いたノウハウを、いずれは多くの地域に広げていきたい」と、横田さんは決意を語った。

※働くことに悩みを抱える15~39歳の若者を対象に、就労・自立支援を行う相談窓口。

認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ

茨城県内の民間非営利活動の充実を図り、市民組織の運営支援、生活困窮家庭や外国人生徒の学習支援の推進、生活困窮者などの支援にかかわる団体のネットワークづくり、地域円卓会議の開催、市民コミュニティ基金「いばらき未来基金」の運営などを行う中間支援団体。

ホームページ : http://www.npocommons.org

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

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