本文へジャンプ
ファイザー株式会社 Working together for a healthier world より健康な世界の実現のために
ここから本文です

2016年度助成団体 THE BIG ISSUE掲載記事

壁画制作などアートで「町の魅力」を発信
障害のある人が町の復興に参加 誰もが素敵に生き、はたらけるように
-NPO法人  ポラリス

2011年の東日本大震災で637人もの犠牲者を出した宮城県亘理郡山元町で、障害のある人と地域の人々が共に復興を目指してきた「NPO法人ポラリス」。その歩みと、現在取り組んでいる「山元ストーリーブック」構想について、代表理事の田口ひろみさんに聞いた。

津波で637人が犠牲に 障害者とともに復興へNPO設立

画像:ポラリス代表理事 田口 ひろみさん ポラリス代表理事 田口 ひろみさん

イチゴの生産が盛んな宮城県東南端の山元町は“東北の湘南”と称されるほど温暖な海沿いの町だ。現在「ポラリス」の代表を務める田口ひろみさんは26年前、仙台から引っ越してきた。「子育てをしながら社会福祉協議会(社協)に勤め、精神保健福祉士の資格を取り、障害者の授産施設『工房地球村』の施設長になりました」

ところが就任から3年後の2011年、東日本大震災に見舞われて施設は一時閉鎖。町は津波に襲われて市街地の4割以上が浸水し、約130軒あったイチゴ農家のうち数軒を除く大半が壊滅状態。人口約1万6000人の町で637人が犠牲になった。尊敬していた地域のリーダーたちも亡くなり、田口さんは絶望に打ちのめされたという。

「震災で町民は、町の課題は行政か社協が解決すべきだと受け身になってしまった。心のケアが必要な人が増える状況でも、町に精神科の病院はない。そんな時、全国から精神科関連団体や障害者支援団体が駆けつけてくれました。おかげで『工房地球村』の利用者さんは全国から愛情をたっぷりいただき、いい表情に変わっていきました」

障害のある人が町の復興に参加する姿を見れば、受け身になった町民も変わってくれるかもしれない。そう考えた田口さんは12年、障害者が働くコミュニティカフェ「カフェ地球村」をオープン。落ち着ける雰囲気と、コーヒーや焼き菓子などが好評なだけでなく、施設職員やボランティア、障害のある人とその家族が「障害者福祉や地域課題について学び合う場」、復興支援に訪れた人には「地域おこしの取り組みを学ぶ場」にもなっていった。そして、この学びを機に「障害者福祉と同時に、地域の人たちのメリットにもなる市民参加型NPO」をつくろうと、東京から復興支援に来ていたNPOの若者たちと議論を重ねた。田口さんは15年3月に社協を退職、5月に「NPO法人ポラリス」を設立した。

写真:地域のアトリエで“ダンスの仮面”に色を塗る作業(写真左)オーストラリアのアート団体との交流(写真右)地域のアトリエで“ダンスの仮面”に色を塗る作業(写真左) / オーストラリアのアート団体との交流(写真右)

山元が元気になるアート 地域の14団体53人が参加 駅前に町の魅力伝える壁画完成

写真:壁画「Happyやまのもと」壁画「Happyやまのもと」

ポラリスは現在、3つの事業を行っている。

まず、「地域全体が、障害者がはたらき、楽しみ、学ぶフィールド」と考える「障害者支援事業」では、就労継続支援B型事業所(※1)として、精神・知的・発達障害のある22人の仕事や表現活動を支援。「復興したイチゴハウスの掃除やイチゴの加工、スーパーの資源回収」のほかに、「アートによる社会参加」では、デザイナーの協力も得て「まちづくりにつながる商品開発や、町内企業の看板やホームページなどに使用するイラスト制作、イチゴの復興を全国に宣伝するためのキッチンカーに描くイラスト制作」なども請け負う。16年9月には、民家を借り、「地域のアトリエ」も開設した。

こうした活動が新聞などで紹介されるたびに「うちの子、ポラリスに通わせているのよ」と家族が誇りをもってくれるのがうれしい、と田口さんは話す。

2つ目の「心のケア事業」では、月に1回程度、「心のケアカフェ」を開催。「家族や親戚、同僚などを亡くした人、生き残ったことを申し訳なく思っている人など、被災した山元町では今なお心のケアが必要で、精神科医や看護師、地域住民が集い、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人への接し方などを学び合っています」

3つ目の「地域コミュニティ創造事業」では、「福祉の枠をこえて、すべての人に意味がある活動」を目標に、ダンスワークショップやオペラを楽しむ会、大企業の若手と町のリーダーたちが対話する場、町の誇りとなる歴史を学び合う会など、さまざまな「対話と学びの場」を企画している。

ポラリス設立から2ヵ月後、仙台でその活動内容を聞いたスーパー経営者が、「障害のある人と共に生きる町、はたらく町をつくる応援をしたい」と、津波で壊滅したJR常磐線の復旧に合わせ、JR山下駅前に開店するスーパーに「山元が元気になるアートを」と壁画制作を依頼。ポラリスは、障害者の芸術活動支援の実績を持つ支援団体からアドバイスを受け、1年かけて壁画制作プロジェクトを進めた。

まずは地域の歴史・文化を学び、ポラリスの利用者、支援学校や中学校の美術部、イチゴ農家、若者のNPOなど14団体53人が参加して「キリコ(※2)のワークショップ」を開き、143点のモチーフを制作。京都のデザイナーにも協力してもらい、16年10月に高さ2m、長さ30mの壁画「Happyやまのもと」が完成した。そこには合戦原遺跡の線刻画や仙台藩が外国船を監視した唐船番所跡、民話のモチーフなどが描かれていて、山元町の歴史や文化がひと目でわかる。

障害ある利用者と地域の人が始めた 地域の魅力を発信する活動

「この活動を壁画だけで終わらせるのはもったいない」と考えた田口さんは、ファイザープログラムに応募。助成が決まった今年から、障害のあるポラリスの利用者と地域の人が山元町の魅力を発信するプロジェクトを始めた。

今春から全3回で企画した「山元の歴史・民俗・文化・自然を学ぶカフェ」には合計208人が参加した。資料を綴じたり、コーヒーを淹れたりする作業はポラリスの利用者が担当。1回目の5月には「合戦原遺跡の線刻画」について学芸員や歴史研究家が解説。参加した地域住民からは「壁画が世界からも注目されているのは、とても誇らしいこと」といった感想が漏れた。

2回目の6月は、津波で流され再建した八重垣神社の女性宮司が「神社の歴史や、津波で流失した神社本殿の再建までのストーリー」について語り、3回目の7月は「修復が望まれている、仙台藩家老の大條氏拝領の茶室」について、大條家の菩提寺である徳本寺で、住職と専門家、町民らが対話した。

これら3回のカフェで生まれた「対話と学び」や「町民の思い」を文章と障害者のアートで表現し、地域の人たちが山元町に誇りをもち、元気になれるような「山元ストーリーブック(仮称)」を今年12月には完成させる予定だ。

「1000部はカフェの参加者や関係者、町外の高校に進学する約150人の中学3年生に卒業記念として配り、その後、増刷して、沿岸部の震災遺構を巡る復興ツアーやイチゴ狩りに来た人たちのツアーパックに組み込んでもらおうと考えています。人手もお金も足りない山元町ですが、これからも全国の方に教えていただきながら、障害のある人もない人も素敵に生きてはたらける、持続可能な地域にしていきたいと思っています」

  1. ※1 雇用契約に基づく就労が困難である人に対して、就労機会の提供、その他の就労に必要な支援をする事業
  2. ※2 東北に伝承されている、神棚飾りをつくる切り紙の技法

NPO法人 ポラリス

東日本大震災で被災した宮城県山元町の新たな創生を願い、障害者等の社会的弱者も含め誰もがこの町で素敵に生き、はたらける地域づくりへの貢献を目指し、2015年5月に設立。障害者福祉の充実と、これからの地域のさまざまな課題解決のために、NPO活動の必要性について理解を広げ、連携する人たちを増やすことを目指している。

ホームページ :http://polaris-yamamoto.com
TEL・FAX :0223-36-7410

※名称・団体名はTHE BIG ISSUE掲載当時のものです。

このページの先頭へ

ここから下部共通部分です
ファイザー株式会社
Copyright© Pfizer Japan Inc. All rights reserved.
上部共通ナビゲーションに戻る