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AMRと闘うために、私たちが今できること
第2回 「感染症って何だろう」

感染症はウイルスだけではなく、細菌などさまざまな病原体によって引き起こされます。この病原体に薬が効かなくなる「薬剤耐性(AMR:エイエムアール)」が問題になっており、私たちの生活に大きな影響を与える懸念があります。
そのAMRとは一体何なのか、なぜ問題になっているのか、どのように対策すれば良いのかを、全4回にわたって、専門家の方々にファイザーの新入社員が聞いていきます。
今回は「感染症って何だろう」をテーマに、感染症に詳しい忽那賢志先生にお話を伺いました。医療が進歩したにも関わらず、なぜ人類は感染症に苦しめられるのでしょうか。



忽那 賢志 先生
大阪大学大学 院医学研究科 感染制御医学講座 教授



安藤さん
ファイザーの新入社員。趣味は弓道(昇段に向けて奮闘中)。​​​​​​​


​​​​​​​
川口さん
ファイザーの新入社員。趣味はサイクリング。

INTERVIEW INDEX

  • 1.感染症ってナニ?

  • 2.AMRが及ぼす医療への影響

  • 3.抗菌薬の適切な使用とは

1.感染症ってナニ?


  
 

忽那先生、今日はよろしくお願いします。



よろしくお願いします。まず、「感染症」は聞いたことがありますか?



はい、最近は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やサル痘などの感染症の流行を耳にします。
感染症とはどのような病気なのでしょうか?



まず、感染症の原因となる病原体は、他の生物に住み着いて、増殖しています。病原体に寄生されている生物のことを「宿主」と呼び、病原体が宿主に住み着くことを「感染」といいます。感染症の病原体は細菌、ウイルス、カビ、寄生虫などで、我々人間だけではなく、さまざまな生物がこれら病原体の宿主となります。この宿主の体に病原体が侵入して起こる病気のことを「感染症」と呼ぶのです。
ですから、感染症という病気が成り立つためには、病原体と宿主、さらにお互いをつなぐ「感染経路」が必要です。例えば新型コロナウイルス感染症ではウイルスが病原体で、私たち人間が宿主です。感染経路としては、空気中のウイルスを吸い込むエアロゾル感染、ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの粘膜に付着する飛沫感染、ウイルスが付着したものを触った手指で粘膜を触る接触感染などがあります。
 




感染症の病原体や感染経路はさまざまなんですね。
病原体のうち、細菌とウイルスはどう違うのでしょうか。



まず大きさが違います。細菌は1~5μm(ミクロン:ミリの1,000分の1)のものが多く、これでもかなり小さいのですが、ウイルスは細菌の50分の1以下とさらに小さいです。
また細菌は生物なので、栄養源さえあれば自分で生活し増えることができますが、ウイルスは自分だけで生活し増えることができません。そのため生物とはされておらず、何か生物に寄生しなければ増えることができないのです。また細菌は主に特定の臓器に感染する傾向がありますが、ウイルスは感染が全身に広まるという違いもあります。


 

ウイルスは生物とされていないのですね!
細菌とウイルスが全く異なるということがわかりましたが、治療の方法も異なるのでしょうか。



その通りです。
細菌に使う「抗菌薬」では、細菌の構造や増える仕組みを阻害することによって抗菌効果を発揮します。一方、ウイルスの構造や増える仕組みは細菌と全く違い、抗菌薬が効かないため、「抗ウイルス薬」を使用します。


 

抗菌薬は聞いたことがありますが、その使用で細菌による感染症がなくなることはないのでしょうか。
 




抗菌薬によって減少している感染症はあります。
たとえば、結核は第二次世界大戦直後まで多くの人の命を奪い、若年者の死因の第1位という状況もありましたが、戦後はストレプトマイシンなどの抗菌薬が登場し、亡くなる人は少なくなりました。高齢者などでは依然として発症が認められますが、少なくとも以前のような状況ではありません。
一方で、AMRにより新しい感染症が登場することもあります。たとえば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)です。黄色ブドウ球菌は健康な人の皮膚に存在しているありふれた細菌の1つですが、これにAMRが起こり、薬剤耐性菌であるMRSAが増加しました。現在では黄色ブドウ球菌の半数以上を占めます。MRSAはメチシリンという抗菌薬に耐性をもった細菌で、1980年代から医療現場で注目されてきましたが、現在でも医療現場で頻繁に検出される薬剤耐性菌であり、注意すべき菌です。
このように、AMRが起こってしまうと今まで効いていた抗菌薬が効かなくなり、新たな感染症を生み出してしまう恐れがあるのです。

2.AMRが及ぼす医療への影響



それはとても怖いお話ですね…。
ほかにもMRSAのような問題となっている耐性菌はいるでしょうか。



ほかにはペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌科細菌、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)といった薬剤耐性菌が大きな問題になっています。



AMRが問題になっている菌はたくさんいるのですね。薬剤耐性菌が増えると医療にどのような影響がでるのでしょうか。
 

​​​


まず、人間には病原体から体を守る「免疫」というものがあります。この免疫が正常に保たれていることによって、人間の体内や皮膚に通常存在している病原体も悪さができません。しかし病気になったり、手術などの体に負担の大きな治療を行うと免疫が弱まり、普段は免疫により悪さのできない病原体が活発になり、全身に炎症を引き起こし、時に生命を脅かすことにもなります。
ですからもし薬剤耐性菌が病院内に広がってしまうと、感染症のリスクがさらに高くなってしまうため、がんなど、命にかかわる病気に対しても行われる体に負担の大きな治療が、行えなくなってしまうかもしれません。薬剤耐性菌の出現はこのような高度な医療の実施をも妨げることになってしまうのです。



忽那先生が勤務される病院では高度な医療を必要とする患者さんがたくさん来られると思いますが、薬剤耐性菌に対してどのような対策を取っていますか。



まずは薬剤耐性菌に限らず感染症全般に言えることですが、院内に病原体を持ち込ませないように注意しています。新型コロナウイルスのように、感染症は症状がなくても感染を広めることがありますので、現在では来院する患者さんにはマスクの着用をお願いしています。
また本院の外来の入口の床に「ゾウの足跡」のイラストを描いています。これは来院した患者さんがこの「ゾウの足跡」をたどって自然と手指消毒に導かれるようにしたものです。
 

 

本院の医療従事者も診察の前後に手洗いや消毒を徹底しています。
他の対策としては、AMRを広げないために必要な、抗菌薬の適切な使用を患者さんに呼び掛けることです。

3.抗菌薬の適切な使用とは



まずは手洗いやマスクの着用など、基本的な感染症対策が大切なのですね。
「抗菌薬の適切な使用」とはどのようなことでしょうか。

 

 

「適切に使用する」とは、その菌に効く抗菌薬を選んで、適切な量を適切な期間使用して薬剤耐性菌の増殖を避けるということです。
抗菌薬の処方は医師が感染症の原因の菌を特定した上で行いますが、症状が治まったからといって患者さんが自己判断で抗菌薬の使用を中止することは、薬剤耐性菌の増殖を促すことになります。
というのも、薬剤耐性菌はその名の通り薬剤に対する耐性をもってはいますが、適切な量や期間の抗菌薬を投与すれば増殖を抑制することができます。お医者さんはその部分まで考えて抗菌薬を処方するのです。言い換えると、処方せんがない抗菌薬の購入はしてはならないということです。
現実にはインターネット上でも抗菌薬を購入できたりしますが、これはAMRを広めることにつながりますので、何か症状があるからと自己判断で薬を購入することもやめましょう。
 

 



抗菌薬の適切な使用についてわかりました。
もし他にも抗菌薬について分からないことがあったときはどうしたらよいでしょうか。



お医者さんが抗菌薬を処方するのには理由がありますので、それを信じて指示に従ってください。用法、用量を守って、出された薬は飲み切ることが大事です。
もし疑問に思うことや、不安に感じることがあれば、ぜひお医者さんや薬のプロフェッショナルである薬剤師さんに尋ねてほしいと思います。
 

今回のポイント
 

① 感染症を引き起こす病原体(細菌・ウイルス・カビ・寄生虫)はその特徴だけでなく、治療法も全く違います。
② 抗菌薬は適切に使用しないと、薬剤耐性菌を増やす原因になります。
③ 医療機関では適切な抗菌薬の処方と感染対策の実施により、AMRの拡大防止に努めているので、抗菌薬を使用する際は医療従事者の指示に従うことが大切です。

 

※掲載されている本文と写真は取材当時(2022年11月)のものです

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