新薬開発における「プロジェクトマネジャー」の役割
医療用医薬品は医師によって使用される医薬品で、医療機関を通じて患者さんに届きます。そのため、社員の所属部署によっては、直接、患者さんと会う機会は限られますが、常に患者さんを思って仕事をしています。ファイザーにある様々な部署の社員が、日々どのように患者さんを思い、どんな仕事をしているのかご紹介します。
今回は、5~10年かかるといわれる医薬品開発に携わるプロジェクトマネジャー(以下、PM)のY.T.とJ.T.に話を聞きました。 J.T.は、患者さんとご家族の思いに触れることで、新薬開発の意義を改めて振り返ることができると話してくれました。 Y.T. の記事はこちらから。
新薬開発を一気通貫する「指揮者」
私は新卒でファイザーの医薬開発部門に入社し、臨床試験(治験)のモニタリング、治験の進捗や必要な文書の管理、治験薬の説明書の日本語版作成、規制当局への申請文書の取りまとめ、規制当局との窓口などを経験してきました。それを活かそうと、開発に携わる社内の様々な専門職をつなぐPMのポジションの社内公募に応募し、2019年に異動しました。
PMの重要な役割は、数十人のチームメンバーのコミュニケーションをつなぐハブとなり、それぞれが専門家の立場で力を発揮して、開発チームとして良い仕事ができるようにし、医薬品開発というプロジェクトを前に進めることです。新薬開発の各プロセスの実務をやっていた時とは視点が異なり、PMには開発開始から承認取得まで「一気通貫」で関わるおもしろさがあります。
PMは「オーケストラの指揮者のような存在」と言われます。オーケストラの全体像を把握し、それぞれの楽器を演奏するメンバーとコミュニケーションをとって、素晴らしいメロディーを奏でるという目標に導く指揮者と共通するからでしょう。
長丁場の新薬開発 目標を見失いそうになることも…
とはいえ、通常、数年から十数年かかる新薬開発には困難がつきもの。いつまでに承認を取ろうと目標を立て、タイムスケジュールを組んで始めるのですが、予定通りにいかなかったり、逆に大きく早まったりして開発戦略の見直しを迫られることもあります。
開発チームとして、新薬を1日でも早く患者さんにお届けするという大きな目標は変わらないのですが、予定通りに進まないと数十人のチームメンバーの意思統一が図れず、チーム全体として目標を見失いそうになることもあります。
そんな時、プロジェクト全体を見ているPMがPatient Centricity(ペイシェント・セントリシティ、患者さん中心)を意識して、最終目標に向かって進むためにチームメンバーの目線を合わせ、必要な対応を促すことが重要だと感じています。
仕事の先には、患者さんとご家族
所属部署全員のPatient Centricityの意識をさらに高めてほしいと、「Think about Patients, Act Now」という活動を2020年に始めました。部の会議で定期的に10~15分の時間を設け、「患者さんの思い」や「外から見た製薬企業」などについて部署のメンバー全員が考えるきっかけを提供しています。
一言でPatient Centricityといってもテーマは広いので、私ともう1人の企画メンバーが常にアンテナを張り、いろいろなトピックを紹介しています。これまでに患者さんの思いを感じられる動画の視聴、治験に参加した患者さんの語り、一般市民からみた製薬産業に対する意識調査などを取り上げてきました。患者さんやご家族がお話ししている動画を視聴した時には、同僚からこんな感想を聞きました。
「患者さんの言葉を聞いて、感情を揺さぶられた」
「新薬開発の意義を改めて振り返ることができた」
会で共有するものを選ぶために動画を検索する際、私自身、患者さんとご家族のいろいろな思いに多く触れ、医薬開発部門に入社した原点に返る機会にもなります。
私たちの仕事の先にいるのは、患者さんとご家族。その意識は医薬開発部門、そして会社全体が持っていると感じます。また、「Think about Patients, Act Now」を通してPatient Centricityの意識も着実に根付いています。Patient Centricityは常に意識するべき重要な軸なので、今後もこの活動を継続していきたいと思います。
関連リンク
■ 【“患者さん”を考える】国際共同治験に反映 日本の患者さんの声
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/external-communication/2023-02-22
■ 医薬品開発
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/development/index.html
■ 医薬品開発の取り組み
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/development/dj_approach/index.html