神奈川県がん患者団体連合会理事長 天野慎介さん
患者さんや障がい者、市民による活動を支援し、25年にわたり地域に根ざした『健やかなコミュニティづくり』を支えてきたファイザープログラム。
本稿では、2024年度に初めて助成を受けた神奈川県がん患者団体連合会理事長の天野慎介さん、役員の橋本利栄子さんに、申請時の状況や助成金の使途、今後の目標ついてお話しいただき、同時にファイザーの支援姿勢について、ファイザープログラムを担当するコミュニティ・リレーション部の喜島智香子に話を聞きました。
幅広い社会課題を『ヘルスケア』と捉え
多様な生き方を支える活動に助成するファイザープログラム
喜島 ファイザープログラムは、保健・医療・福祉に加え、社会参加活動まで含めた『心とからだのヘルスケア』を支える市民活動に助成しています。『ヘルスケア』というと、病気や健康に特化した制度と思われがちですが、福祉や就労、過疎、DV、貧困、被災地支援、性被害など幅広い社会課題を『ヘルスケア』と捉え、多様な生き方を支える活動に助成しています。
本プログラムの強みは、最長3年間の助成が可能な点です。単年度では難しいプロジェクトや市民研究も長期的に支援できます。またプロジェクトの実施に必要な人件費や事務局の経費も対象としている点が特徴的です。新たなプロジェクトを実施する際には、人材の確保や専門家の協力が必要となる場合があり、プロジェクトを遂行する上で重要な費目と考えています。
さらには、領収書など証憑書類の提出を不要とし、手続きの負担を減らし、活動そのものに専念していただける仕組みにしています。
なお、本プログラムは社会貢献活動の一環であり、医薬品関連等、ビジネスに有利となる活動は対象外としています。
天野 多くの患者団体は、いわゆる“手弁当”で活動しており、助成制度に申請したくても事務作業の負担が大きく断念する団体もあります。その点、ファイザープログラムのように活動に集中できる制度は現場にとって本当にありがたい存在です。
橋本 仲間は皆、善意で動いていますが、がん患者さんであるため人によっては無理をしてしまうこともあります。例えば人件費などのサポートをしてくれる等の『無理をさせない仕組み』としてファイザープログラムは、そうした見えにくい善意の活動に光を当ててくれる制度だと実感しています。
ファイザープログラムの特徴
【助成対象】
保健・医療・福祉に加え、社会参加活動まで含めた『心とからだのヘルスケア』を支える市民活動が対象
「健やかなコミュニティ(特定の地域社会や共通の思いや立場による人々の集まり)づくり」の試みを支援することを目的とする
斬新性と計画性・具体性を重視
※市民研究への取り組みにも注目している
【ファイザー】
公的支援が届きにくい活動にも光を当てる
【プログラムのモットー】
マイノリティが抱える課題に対して、先陣を切って支援する姿勢を貫く
「健やかなコミュニティづくり」を支える市民活動を応援
【強み】
最長3年間の継続助成が可能。単年度では実現が難しいプロジェクトにも対応
人件費・事務局経費も助成対象。活動の基盤づくりを支援
領収書などの証憑書類の提出が不要。申請者の事務負担を軽減し、現場に集中できる設計
【申請書式】
初めてでも迷わず書ける、シンプルで整理されたフォーマット
ホームページに記入例や丁寧な説明があり、安心して取り組める
収支記入は自動算出式のエクセルシートを採用。ミスを防ぎ、作業効率を向上
申請プロセスが活動の棚卸しにもつながり、団体の方向性を再確認する機会に
【評価の厳格性】
書面審査に加え、丁寧なヒアリングを実施。リーダーの熱意や団体の課題を深く理解
斬新性・計画性・具体性を重視。独自性のある取り組みが高く評価される
団体が求める助成の条件がファイザープログラムに合致
天野 私たち神奈川県がん患者団体連合会(以下、がん連)は、県内16団体で構成され、『がんになっても安心して暮らせる県をつくる』、『県内のがん医療の向上に寄与する』を目的に、がん教育(小学校・中学校・高校の授業に登壇)、ピアサポート、政策提言の3つを柱に活動しています。県の助成制度の終了を機に、新たな助成先を探し始めました。先ほど喜島さんが述べたような、複数年度の助成や、人件費などの経費への助成が可能であるといった制度は限られていますが、がん教育では外部講師として登壇するスタッフへの交通費の支払いが発生するため、そういった資金として助成金を活用できる制度がないか探していました。
橋本 条件に合う助成制度が見つからず苦労しましたが、探し続けていた中で偶然ファイザープログラムを発見できました。応募要項を読むと、患者団体でも応募でき、対象となるプロジェクトが自分たちの活動内容と合致した助成制度であることが分かり、応募することに決めました。
喜島 応募要項を見て、団体の活動が『心とからだのヘルスケア』に該当すると判断した団体に応募をしていただいていると感じています。『ヘルスケア』を幅広い意味で捉え、応募に挑戦していただきたいです。
神奈川県がん患者団体連合会役員 橋本利栄子さん
ファイザープログラムの申請プロセスはシステマティックでスムーズに進められる
橋本 ファイザープログラムの申請書式はとても分かりやすく、団体運営や経理のプロでない私でも迷うことなく、段階を追って書くことができました。作成時、以下のことが良い点だと感じていました。
項目ごとに書くべきことが明確になっている
ホームページに丁寧な説明や記入例があるので、確認しながら安心して進められる
申請書全体の流れが整理されている
橋本 申請書を作成する時、複雑なフォーマットや細かな条件に苦労し、書き上げるまでに何度もやり直すことがあります。ファイザープログラムではそうした負担が少なく「これなら、後から修正などを指摘されても慌てなくて済む」と安心感がありました。心の余裕を持って申請に向き合えたことは、大きな特徴だと思います。
喜島 助成金の申請は、団体の皆様にとって大きな負担になります。そこで、その手間を少しでも省き、安心して取り組んでいただけるように、申請書の改善・アップデートは欠かさないようにしています。シンプルで流れが分かりやすく、初めての方でも迷わず書けるよう心がけています。
例えば、収支の記入は以前から間違いが多く見受けられました。数字の整合性が取れず、申請後に修正が必要になるケースも少なくありません。そこで、入力すれば自動算出できるエクセルシートをご用意しました。こうした工夫によって、団体の方々が余計な事務作業に時間を取られず、本来の活動に集中していただけるようにしたいと考えています。
天野 資金力のある海外の非営利団体は、助成獲得のため専任スタッフを雇いますが、日本の多くの団体は“手弁当”で活動しています。がん連でも事務作業に追われ、活動費の半分が人件費に消えたこともありました。申請の負担を軽減していただけるのは、本当に助かります。
橋本 また、私たちの活動を『棚卸し』し、優先順位をつけたうえで、申請書にはがん教育の内容を中心に記載することにしました。採択側にも分かりやすく伝わったと思いますし、このプロセス自体が活動の整理につながりました。
神奈川県がん患者団体連合会の方々
助成金は活動の安定的な運営や質向上のための資金として活用し、目標への大きな一歩に
橋本 助成金は、学校で講演する患者さんにアドバイスを送る外部講師の費用や、講師派遣を効率化するシステム整備に充てました。また学会発表の準備費用、約6000件のアンケートをテキストマイニングで分析して授業前後の子どもの意識変化や講師の強みを可視化する仕組み構築にも活用しました。
天野 今後の目標は2つです。1つは、医療者だけでなく当事者が語る意義を広め、がん教育を普及させること。もう1つは、持続可能な活動につながる仕組みづくりをさらに充実させることです。助成によって基盤を整えられたことは大きな一歩でした。
ファイザープログラムが積極的に支援するのは光の当たらない課題などに取り組む団体
喜島 ファイザープログラムは25年の中で『ファイザーらしさ』を大切にしてきました。公的機関が支援しづらい活動や、社会のマイノリティが抱える課題、光の当たらないテーマに対しても積極的に助成しています。
選考委員がプログラム選考評価時に重視しているのは斬新性と計画性・具体性です。新しい要素を取り入れた活動や独自性が際立った取り組みは評価が高く、その実現可能性を丁寧に見ています。また、本選考に上がった団体に対しては、申請書だけでなく直接ヒアリングを行い、団体が抱えている課題、リーダーの熱意や想いを把握することにも努めています。
天野 ヒアリングがとても丁寧で長く、ごまかしは利きません。書面だけではない、真剣に評価する姿勢を感じました。
喜島 結果として採択に至らない団体もありますが、素晴らしい活動ばかりです。そうした団体も別の形で支援していきたいと思います。「私たちの活動は心とからだのヘルスケアにつながる」と感じたら、ぜひご応募ください。熱意と工夫を真摯に受け止めます。
25年間、多様な団体の挑戦を後押ししてきたファイザープログラム。
その支援は単なる資金援助ではなく、団体が『未来を描ける仕組みづくり』を後押しし、さらには社会全体の未来にほのかな光を当てるものです。
多様な活動が対象になりますので、要件をご確認のうえご応募ください。
コミュニティ・リレーション部 喜島智香子